農協の大罪

「農協の大罪」(山下一仁)読了。
農学部であるにも関わらず、農業から距離がついてしまっているので、わずかに軌道修正。

農協の大罪 (宝島社新書)

農協の大罪 (宝島社新書)

目次
第1章 「汚染米横流し事件」の背景
第2章 保護なしでは「GDPゼロ%」の日本農業
第3章 誰が日本の農業を衰退させたのか?
第4章 農協の台頭と「大罪」
第5章 農政トライアングルとは何か?
第6章 農協、農林族議員農水省の「壁」
第7章 揺らぐ農協
第8章 農政が脅かす「食料安全保障」
終章 強い農業を築くためにするべきこと

 本書は、農水省研究員の著者が、農協=自民党農水省の「農政トライアングル」が引き起こす農政問題を指摘したもの。農協がいかに農民を食い物にしてきたか、減反政策がいかに非効率的なものか、そしていかに組織が組織のために存在してきたかといったことを歴史・経済的な観点から説明している。これらの点に関しては、これ以上分かりやすい説明は見たことがなく、農政を理解する上では欠かせない書だろう。これらを踏まえて著者は、補助金減反政策などの、組織の利益にしか結び付かない政策をやめ、主要な農家の所得を補償するべきだ、と説く。そして、農協と兼業農家の結びつきを断ち切り、食糧安全保障を実現するべきである、と。

 食糧安全保障の話になると必ず出てくる「日本は生産には向かない国だし、どうせ石油なかったら、食糧安全保障とかいっても意味ないよね」という論に関しても、食糧危機状態においては、水と土地以外の生産要素は代替可能だ、とばっさり。個人的に日本の農業における最大の問題だと思っている、土地の重要性も指摘されている。農地を転用したら、あるいは、耕作放棄地として放っておいたら、いずれ農地としては使えなくなるよ。

 個人的に怖いな、と思ったのは、農学部に所属して3年間、どの教授も農政の問題について触れなかったことだ。問題だと認識していないはずはないから、どっちかというとコトナカレ主義なんだろうか。そういえば、シューカツ中の友人が持っていた農協のパンフレットは怖いくらいさわやかモードだったな。来年には農協に勤める同期がいるかもしれないわけだ…


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