2013-01-01から1年間の記事一覧

今年読んでよかった本 in 2013

毎年恒例、今年読んでよかった本をご紹介。今年は既読本をすべてブログに落とすのは難しかったけど、しかるべきものは書いたと思っている。「岡本太郎の宇宙」も読破したし、民俗学の二大巨頭である柳田國男と南方熊楠の世界に肉薄できた。「仕組みや制度」…

キウイγは時計仕掛け

「キウイγは時計仕掛け」(森博嗣)読了。なお、以下大変にネタバレというか、既読の人しか意味がわからない考察をします。主に言葉遊びをします笑キウイγは時計仕掛け (講談社ノベルス)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/11/07メディア: 新…

願わくは、これを語りて平地人を戦慄せしめよ。

ついに遠野物語を読んだ。河童に天狗、こんな世界があるのかって感じで心地よい。でも、これって、なにが凄いんだろう?この疑問は間違いなく大切なんだよね。遠野物語を単純な昔話集として楽しむことができるだろうか?いやまあ、できると言えばできるけど…

沈まぬ太陽

※この話はフィクションです、と常に表示される本書だけれども、もちろん日本航空をモデルとしている。理不尽な境遇に遭いながらも、社内の労働問題や不正を正していく恩地の物語。恩地さんマジスゲーっす。労働争議でいきなり委員長になって、社長にクリティ…

「愛と経済のロゴス」はだいたい贈与論

カイエ・ソバージュ三冊目。あー、これはタイトルに負けちゃってる感あるなー。えっと、なにが不満かというと、風呂敷が小さいこと笑。「熊から王へ」はすごかった。東北だけでは飽きたらず、アリューシャンから環太平洋まで見て、人類普遍的に、「王はこう…

東京の自然史

いつぞやの古本市で見つけた「東京の自然史」。確か、東北の震災のあと半年くらいしてから新版が出たのだったような。あの頃、東北の震災から、やがて来る関東の震災への危機感は刺激され、こうした書籍の需要の高まりを思わせた。東京の自然史 (講談社学術…

ジグβは神ですか

「ジグβは神ですか」(森博嗣)読みました。作中の時間で言うと、前回から3年は空いたようだけど、ノリは相変わらず。ついにノベルス版に手を出してしまった……ジグβは神ですか (講談社ノベルス)作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2012/11/07メディ…

ローマというシステムの強さ

ついに「ローマ人の物語」を読み始めた。最近はてきとーなBOOKOFFに入ると、1〜5巻くらいまではそれぞれ100円で手に入る。以降の巻はなかなか難しいっすね。とりあえず、プロローグ的な「ローマは一日にして成らず」(1,2巻)と「ハンニバル戦記」(3〜5巻)…

遠野物語は、民俗学のテキストなんかではない

レヴィ=ストロースの「悲しき熱帯」、岡本太郎が求めた民族学、南方熊楠の民俗学を辿ってきて、やはり、どこにでもその影を落とす柳田國男。日本で民俗学を考える上で外すことができない巨人だっていうことはわかるんだけど、とりあえず手にとった遠野物語…

凄いものを見て、凄いと感じられること

「ヴォイド・シェイパ」読みました。文庫版の表紙が綺麗だったので、うっかり買ってしまった。森先生、あいかわらず凄さを垣間見せる手法がめちゃくちゃうまいなー、と思う。S&Mシリーズとかの萌絵→犀川先生、犀川先生→四季の視点でもう確立されていて、まあ…

それは恋愛に似ている

新宿の古本市で見つけた。「生き物が好きな人」と「生き物を飼うことが好きな人」は、似ているようで違う。この一文で始まる。うん、まさにその通り。生き物を飼うということ (ちくま文庫)作者: 木村義志出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/07/06メディ…

SFの定義は世界フリーク、だと思う

SFの定義は世界フリーク(Sekai Freak)、だと思う。サイエンス・フィクションとか、すこし・ふしぎ、とか、まあ色々な定義があるけども、やっぱり僕にとってのSFは、世界の原理のようなものを変えてみて、そこでどんなことが起こるか観察するという箱庭観察…

日本の最深部へ

「岡本太郎の宇宙」シリーズの4冊目。沖縄、恐山、熊野、出羽三山。岡本太郎が「日本」と対峙する文章が集められている。文庫としては『沖縄文化論』が別に出ているが、あれがまるまる収録されているのかと思う。日本の最深部へ 岡本太郎の宇宙 4 (全5巻)…

秩序をひっくり返す装置として

カイエ・ソバージュも少しづつ読んでいくつもり。ほんとは1から読まないと、神話の定義があいまいなまま読み進めちゃうことになるわけだ。2ほどのインパクトはないけど、本来必要なステップだろう。人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ(1) (講談社選書メチエ)…

20年前にもあった「維新の会」

相変わらず維新の会がお茶の間を騒がせているけど、20年以上前にも「維新の会」があったことを覚えている人は少ない。……まあ、僕はまだ小学校に入っていなかった頃の話だけども。大前研一 敗戦記作者: 大前研一出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1995/11メデ…

私は鑑賞者として感激したのではない

GWに渋谷でやってた「海洋堂フィギュアワールド」でガチャガチャやったときの戦利品。これはいいものだ! ちくま学芸文庫の「岡本太郎の宇宙」シリーズをちびちびと読み進める。刊行順でいくと、1対極と爆発→3伝統との対決→2太郎誕生になるんだけど、読み順…

「壁と卵」の現代中国論

この本を初めて開いたのは、ちょうどPM2.5が話題になっている頃だった。とある部品メーカーさんとお仕事をしていて、栃木にある工場にいたのだけれど、花粉なのか、黄砂なのか、それともPM2.5なのかわからないけれど、マスクを外すと目がシバシバするのだ。…

渡りの足跡

好き嫌いを言葉に起こしてみよう、言語化してみよう、と思い始めている。「渡りの足跡」を読んだ。渡り鳥に対する細やかな目線、そこから大きく自然を捉えて、畏敬的な感覚へとつなげること。こういう感じ方、考え方、表現の仕方はけっこう好きだ。積極的に…

イザベラ・バードという素敵な人物について

東北のことをもっとよく知りたい、と思ったのは、やはり震災がきっかけだっただろうと思う。震災があって、東京と東北がどうつながっているか、というパスに敏感になった。東北から東京には人が運ばれてきている。農作物や魚介類も運ばれてきている。工場か…

受け取る物語としての「トーマの心臓」

「トーマの心臓」(萩尾望都)読了。エーリク、ユーリ、オスカーの誰に感情移入するか?トーマの心臓 (小学館文庫)作者: 萩尾望都出版社/メーカー: 小学館発売日: 1995/08/01メディア: 文庫購入: 21人 クリック: 237回この商品を含むブログ (222件) を見る …

DNPミュージアムラボ行ってきた

たぶん今一番未来に近いミュージアムなんじゃないだろうか? DNP、つまり大日本印刷と、ルーブル美術館が共同でやっている実験的ミュージアム。 http://www.museumlab.jp/ 技術が拓くギリシャの名作 今回の展示は「古代ギリシャの名作をめぐって」ということ…

世界の経営学者はいま何を考えているのか

「世界の経営学者はいま何を考えているのか」(入山章栄)読了。アメリカの経営学者はドラッカーなんか読まない。世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア作者: 入山章栄出版社/メーカー: 英治出版発売日: 2012/11/13…

「下町ロケット」をそうやって消費する日本社会が怖い

「下町ロケット」(池井戸潤)読了。あー、すごくオッサン受けしそうな物語だな―と思った。下町ロケット作者: 池井戸潤出版社/メーカー: 小学館発売日: 2010/11/24メディア: ハードカバー購入: 20人 クリック: 404回この商品を含むブログ (196件) を見る な…

目薬αで殺菌します

「目薬αで殺菌します」(森博嗣)読了。Gシリーズ7作目。以下、ネタバレあります。αのラベルがついた目薬に、劇薬が混入されている事件が起こるお話。もちろんそこには真賀田四季の影が。目薬αで殺菌します DISINFECTANT α FOR THE EYES (講談社文庫)作者: …

世界の化けの皮ひっぺがしちゃいますよ!

「百年の孤独」(ガルシア・マルケス)読了。僕の解釈→「マジックリアリズム」=「世界の化けの皮ひっぺがしちゃいますよ!」百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)作者: ガブリエルガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arquez,鼓直出版社/メーカー: 新潮…

柳田國男が競争の歴史を見出したものに、南方熊楠はただのリアス式海岸を見た

「森のバロック」(中沢新一)読了。南方熊楠が「巨人」と言われる理由が、わかった。森のバロック (講談社学術文庫)作者: 中沢新一出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/11/10メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 28回この商品を含むブログ (39件) を見るは…

婆のいざない

「婆のいざない」(赤坂憲雄)読了。悲しき東北、といったところだろうか。婆のいざない―地域学へ作者: 赤坂憲雄出版社/メーカー: 柏書房発売日: 2010/03/01メディア: 単行本 クリック: 17回この商品を含むブログ (7件) を見る 赤坂憲雄の著書は初めてだけど…

貧乏人の経済学

「貧乏人の経済学」(アビジット・V・バナジー、エスター・デュフロ)読了。絶望的な状況に対する唯一の希望は、丁寧な議論の積み重ねである。貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える作者: アビジット・V・バナジー,エステル・デュフロ,山形…