キウイγは時計仕掛け

「キウイγは時計仕掛け」(森博嗣)読了。なお、以下大変にネタバレというか、既読の人しか意味がわからない考察をします。主に言葉遊びをします笑

 すごーく気になったのは、キウイが誰に対するメッセージなのか、ということ。送り先が大会本部だったので、「γ」というメッセージを送る先も大会本部あるいはその関係者ということになる。それが福川だったのか蔵本だったのか?スマリである可能性は低い。スマリまでメッセージが届く可能性は低いからだ。
 逆に、スマリがキウイを送った可能性は高いと思う。というのも、「ゴシップ」のスペルはインドネシア語では"GOSSIP"ではなくて"GOSIP"だから。なので、すごーく簡素化されたイメージとして、(1)四季→スマリで「スイッチ」を押す(福川と蔵元がそういった関係にあることは、母のもとに遥々やってきたスマリにとっては心苦しいことだ。四季は彼の感情をコントロールして、行動を促すことができる)(2)スマリは、2人の関係性が学内のポジションにも影響しているというゴシップを知っているぞ、という脅迫の意味を込めて、差出人をGOSIPとする。外国人なので、差出人をアルファベットにしてもそれほど怪しまれない。(3)スマリは犯行を行なう。こういう感じの理解でわりと自己満足。最近みんなミステリ解決を放棄しだしたので、時代に逆らってみた。
 だけど、結局冒頭の疑問に戻ってきて、「キウイが誰に対するメッセージなのか」がわからない。「ギリシャ文字が犯行現場に存在する」ことが、四季への折り返しメッセージだとしても、それを事前に送付する必要はなく、犯行現場にキウイを置いていくだけでいい。ということはやはり、事前に誰か(福川or蔵本)になにかを伝えることが目的だったということになるけど、それがわからない。この先も色々考えられるけど、この疑問だけが残ってしまう。
 あるいは、島田文子へのメッセージというのもありえなくはなくて、福川死亡→島田が大学にいる理由はなくなる→四季が手を回して島田を「人形をつくる会社」(=アンドロイド的なものを作る会社)への転職を促す、という可能性。かなり飛躍しているかもですが……。
 あと、タイトルの「時計仕掛け」はもちろん、「時計じかけのオレンジ」をモジッたものだけど、"clockwork"というのは「時限性の」というニュアンスで取られがちだけど、「ゼンマイ式の」くらいのニュアンスが強いと思っていて、「時計じかけのオレンジ」も「国家に操られている」「自由意志のない」というような意味のはず。つまり、本作の「時計仕掛け」は「四季にコントロールされている」という意味だろう。