ONE

「ONE」(リチャード・バック)読了。
この本でリチャード・バックが飛ばしたのは、カモメではなく、自分自身だ。

ONE(ワン) (集英社文庫)

ONE(ワン) (集英社文庫)


愛の大切さ。平和な世界のあり方。人類に普遍的なテーマについて真剣に向き合うストーリーだ。
このタイプの小説を読むと、反応は2通りに分かれる。
1つは、その純粋な想いを素直に受け止め、感銘を受けるタイプ。
もう1つは、「胡散臭い」「鼻につく」と感じるタイプだ。
そして、多くの人はこの葛藤に苦しむことを嫌い、自分がどちらの立場に立つかを決定してしまう。
感動した、と言って絶賛するのは容易い。
鼻につく、と言って拒絶するのも容易い。
しかし、そのどちらも十分ではない。
自分がそのテーマについての思考の可能性を制限しているからだ。

それは、作中において、幻想世界を旅する前のリチャードとレスリーが、
他の可能性を考慮せずにひとつの道を選び取っていたこと、
そしてそれに気づいていなかったことに等しい。
彼らは、無限に分岐する世界を旅することで、その考えが過ちであることに気がついた。
そう、すべてはひとつ(ONE)につながっているのだから。