そろそろ、水田に上る季節ですね。

栃木県の水田にて。
[,w200,h300]
 農業用水路に魚道をつける取り組みは以前からあったと思う。でもこれ、小用水路だ。つまり、この隣はすぐ農地になっているわけで、この魚道は田んぼに入ってくる魚類を意識していることになる。

 多くの淡水魚類にとって、水田はゆりかごのような存在だ。水温が高いため、卵が早くかえる。流速が小さいため、遊泳力の小さい稚魚もとどまっていることができる。水路が浅いため、大型の捕食者が入ってこない。こういった理由から、多くの淡水魚、特にフナやドジョウなどは水田内で産卵することが多い。
 捕食者側であるナマズでさえも、大雨になって水かさが増したときに、わざわざ水田に上ってきて産卵する。ご苦労様です。地域にもよるだろうけど、今日から週末にかけての雨でナマズが産卵するはずだ。彼らにとってみれば、水かさが下がるまでに深い水路に帰らなければ、座礁クジラ状態になり、息を引き取ることになる。つまり、水田に上るということは、そこまでのリスクを冒しても得るものが大きいということである。水田は、淡水魚にとって理想的な環境なのである。

 利根大堰にある魚道のようなインパクトはないけれど、この小さな、アクリルでつくられた魚道は、多くの命を紡いでいくだろう。