砂の女
- 作者: 安部公房
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/03
- メディア: 文庫
- 購入: 19人 クリック: 197回
- この商品を含むブログ (346件) を見る
流動する砂の姿を心に描きながら、彼はときおり、
自分自身が流動し始めているような錯覚にとらわれさえするのだった。
彼はこう思っていたようだが、それは錯覚にすぎなかった。やがて妥協し、本来求めていたものとは違う矮小な「自由」を発見し、こうつぶやく。
逃げるてだては、またその翌日にでも考えればいいことである。
男があり得ない「脱出」を諦めれば、物語は幕を閉じるほかない。穴に落ちた男のあり方が、人間の本来的な、社会に対するあり方なのかもしれない。