キラレ×キラレ

キラレ×キラレ」(森博嗣)読了。
Xシリーズ二作目。以下ネタバレあるかもです。

キラレ×キラレ CUTTHROAT (講談社文庫)

キラレ×キラレ CUTTHROAT (講談社文庫)

 なんとなく、Xシリーズの位置づけが見えてきた。一言で言えば、読みやすく、シンプルな作品。森博嗣の作品はS&MシリーズやVシリーズ通して、幻惑的というか難解というか、そういう感じで敬遠する人が多かったけど、Xシリーズではとてもとっつきやすくなっている。
 とりわけ「キラレ×キラレ」はそういった意味での難解さはまったくなく、ミステリというよりかはテレビドラマのサスペンス風になっている。さらに言えば、ホームズ役による謎解きショータイムがないのも珍しい。
 阿部雪枝が一連の行動を取ったことは異常だ、と考える人が多いだろう。安定した状態を保つ満員電車の車内で人を切り裂く。普通ではない。動機も「理解」できない人も少なくないだろう。では、現在の社会は異常ではないか?と言うと、それもまた違うように思う。
 満員電車。あれは異常ではないのだろうか?狭い車内に人間がすし詰めにされ、しかし不平不満を訴えることなく安定状態にある。僕にはそっちのほうが、よっぽど異常に思える。もちろん、このように考えていくと、そもそも異常とはなんなのか、とか、異常であるからどうなのだ、という話になり、袋小路である。ともあれ、異常であったのだ、というかたちでの思考停止に陥るのも、また違うのではないか、と思う。