自然的攪乱・人為的インパクトと河川生態系
「自然的攪乱・人為的インパクトと河川生態系」読了。
タイトル長いよ・・・
- 作者: 小倉紀雄,山本晃一
- 出版社/メーカー: 技報堂出版
- 発売日: 2005/06
- メディア: 単行本
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目次
1.序論(山本晃一)
2.地球環境変化が河川環境へ及ぼす影響(小倉紀雄)
3.河川流送物質の量・質と自然的攪乱・人為的インパクト(白川直樹・山本晃一)
4.生態的基盤としての河川地形に及ぼす自然的攪乱・人為的インパクトとその応答(山本晃一)
5.河川における自然的攪乱・人為的インパクトと河川固有植物・外来植物のハビタット(星野義延・清水義彦)
6.自然的攪乱・人為的インパクトに対する河川水質と基礎生産者の応答(野崎健太郎)
7.自然的攪乱・人為的インパクトに対する底生動物の応答:出水が底生動物に及ぼす影響(加賀谷隆)
8.魚類の生活に影響を与える自然的攪乱と人為的インパクト(森誠一)
9.自然的攪乱・人為的インパクトの観点から見た河川生態系の保全・復元の方向(山本晃一・森誠一)
河川の環境問題って、明らかに昔より注目されなくなっている。
泡が川の上に浮かんでいる70年代の写真を見たり、「アユ百万匹がかえってきた―いま多摩川でおきている奇跡」なんて聞くと川の環境はどんどん良くなってるんだろうなーと思う。それは、たぶん正しいと思う。川に限らず、ね。でも、解決されてきている環境問題は、総じてわかりやすいもの、目に見えやすいもの、短期的な実害が大きいもの、だと思う。一言で言えば、顕在化した問題だ。逆に、潜在化された問題は置き去りのまま。
河川の話に戻ると、10年くらい前までは、河川の水質がけっこう話題になっていたんじゃないかと思う。一方で、今フツーの人が、本書で言及されているような問題をどれくらい認識しているのだろうか?河川のコントロールによる河道の固定化や河原の樹林化。そして、それによって引き起こされる生態系の単純化など。むしろ、それのどこが問題なのかがわからない、という人も多いと思う。
あるいは、「自然」がどういうメカニズムで維持されてきたか、という観点で読んでも面白い。河川では、固定化された環境が存在し続けるわけではない。洪水などの攪乱によって、時間的なゆらぎがあるが、しかし長期的に見ると安定した環境が成立している(中規模攪乱仮説)。このことは河川に限らず、どの環境でも同じだと思うけど、河川では攪乱の頻度が高く、かつ治水という面で人の生活と深く関わっている。ここが興味深く、そして難しいところだ。
すべての著者が研究者であるため、やや専門的なところがあるけど、土木工学や生態学、環境工学を勉強している人、河川行政に携わる人にはぜひ読んで欲しい一冊。