生態学ではなく土木工学を選んだ理由

 大学生前半はいわゆる「地域の自然保護活動」にいろいろ参加した。そのころ一緒に活動していた友人は僕が農業土木を選んだことを不思議に思ったようだ。あんなに生物が好きだったのに、なぜ?ということらしい。

 僕の関心は自然環境に向いており、大小様々な、そして複雑に入り組んだ環境問題が長期のテーマだ。今、もし僕が専門として保全生態学を選んだとしよう。果たして将来、僕はなにをしているだろうか?生態学の方面に進んだとして、その分野から「直接」自然環境にアプローチするには、研究者になるぐらいしかない*1

 僕は、この「直接」ということに力点を置いている。これは「体験」とは異なる。僕の最大の関心事である「環境問題」についてのアプローチを考えると、省エネルギー技術や里山保全活動は直接的であり、政治や環境教育などといったアプローチは間接的であると思う。つまり、問題と自分の間に人間を挟むかどうか、ということだ。前者のアプローチであれば、ほぼ確実に問題解決に寄与できる*2一方で、あまり大きな影響は与えにくい。それに対し、後者のアプローチでは、問題解決に寄与しているかどうかの判定は恣意的な部分が多いが、影響のスケールを考えれば大きなものになる可能性が高い。

 本来的には、この両者のアプローチを両方取ることが好ましいのだけど、ちょっとバイタリティに欠ける僕は、この両輪を時間的にずらして回すことを考えている。つまり、今は(最低でもこの先10年くらい?)は「直接的なアプローチ」に重点をおきたい。あまり確信があるわけではないのだが、直接的なアプローチは年齢を重ねるにつれて、社会の階段を登るにつれて、難しくなるような気がするからだ。

 理由は2つ。ひとつには学問の積み重ねとしての性格があると思う。もうひとつは社会の構造。この辺は理系・文系区分の話と強く関連している。理転は難しいけど、文転はそうでもない、っていうのに近いかも。将来的には間接的なアプローチに重点を置く必要があるだろうけど、たぶん今は直接的なアプローチを採るほうが効率的だと考えている。場合によっては、直接的なアプローチで基盤をつくっておくと、間接的なアプローチを採るのが容易になることもあるかもしれない。

 で、話を最初に戻すと、生態学を興味で突き詰めていくのではなく、なんらかの手段としてとらえるのであれば、それは間接的なアプローチになってしまう、ということに気がついた。そして、今僕がいる場所から比較的近く、生態学と密接な関わりを持つ*3分野、それが工学というアプローチであり、土木という分野だった。



 

*1:もちろん、仕事以外で関わるという選択肢もあるにはあるけど・・・

*2:すごく単純化しているのは分かってます。

*3:そう見えない人も多いかもしれない。