岩石調査に行ってきました!


 初めての岩石調査だった(卒論やりなよ)。基本的には、植生調査みたいにXm×Xmのコドラートをつくって、そのなかにある岩石をしらみつぶしに調べる。あと測量とか。
 もちろん、僕は石なんかさっぱり分かんないから、渓流沿いの植物やら昆虫やらを観察していた。と、調査員の方が「あーサガンだねー」というので、……左岸?えっ、確かに斜面は左岸にあるけど……?悲しみよこんにちはってわけでもないだろうし、あ、砂岩ですね!漢字で話していただきたい。
 紅葉色のゴミグモを見つけて喜んでいる僕を尻目に、調査員のみなさんは、片っぱしから石を割っていく。国際地質学会議のモットーは"Mente et Malleo"すなわち「頭とハンマーで」だそうだ。自然は何も語ってくれないが、とりわけ石はその傾向が強いように思う。これは、岩石の持つ性質ではなく、僕の問題だ。
 では、なぜそう感じるのか?これはやはり、僕が「文脈」を知らないことに由来するのだろう。いつの時代に、どのような地学的な現象によって、どういう過程で岩石が生成されているのか、という文脈だ。自然を相手にする専門分野では、この文脈を現場に結びつけられるかどうかが、ひとつの分岐点なのかもしれない。
 文脈を理解していれば、初めて見た対象でも、その文脈に照らし合わせることで、なんらかの評価を下すことができる。正確なことは言えないかもしれないが、「だいたいあってる」というレベルまで持っていくことができる。素人が見ても風景のようにしか見えないデータに、解釈を与えることができる。それが、専門性に必要な条件だ。