フィッシュストーリー

「フィッシュストーリー」(伊坂幸太郎)読了。
そう、小説はみんなフィッシュストーリーだね。

フィッシュストーリー (新潮文庫)

フィッシュストーリー (新潮文庫)

 文庫落ちしたので。みんな大好き伊坂幸太郎の短編集。伊坂幸太郎の本は「ラッシュライフ」から入ったくちで、新潮社文庫以外は手を出していない。その辺は本読みの嗅覚。あるいは表紙効果。表紙は三谷龍二という方→こちら。以下、ストーリーごとに雑感など。ネタバレは控えめです。

動物園のエンジン

 動物園とか、遊園地とか、駅とか、そういう人がたくさん集まって賑わう場所っていうのは、あたかも、どこかにエンジンがあるように感じる。なにかが、その場所を賑わせるために、動かすために、誰かがエンジンをかけているのだ。そういう妄想することはある。僕だけかもしれないが。
 壊れた機械が役目を失ったあとも動き続けている、という風景は、それだけでストーリーを形づくることができる。たいていの物語は、やっぱりその機械に係わることで、話を進める。この話では、そうはならない。ただ、傍観するのみである。それが、いかにも現代的で、共感を呼ぶのだ、と思う。

サクリファイス

 民俗学風ミステリ。そして伊坂御用達キャラ黒澤降臨。悪人がいない、というのは最近の日本作家の特徴のような気がするが(というほど小説を読んでないけど)、やはり伊坂幸太郎の「悪人とかいないよ」的世界観は群を抜いている。かなり非常識な行動をとっても伊坂ワールドなら許される気がして、安心するのである。
 このストーリーは比較的緊張感のあるつくりになっているのだが、どうも伊坂ワールドであることを思い出すと緊張できない。そう考えると、ミステリ好きにはぬるいし、伊坂ワールド好きにはなんか不純物入りで、なんかどうなのって感じではあるが、新境地開拓計画の一環だと思って生温かく見守ってみる(上から目線)。

フィッシュストーリー

 僕のブログが魚だとしたら、その海の広さに絶望し、空を舞うカモメとの出会いにさえ感謝するだろう。

ポテチ

 「ま た 黒 澤 か」ということで。いや、いいよね、日本文化キャラ萌え小説。皮肉ではなく。もうそろそろ書き手をまたぐキャラクターなんていうのが出てきてもいいような気がする。あ、二次創作というのかそれは。
 「ポテチ」というタイトルの意味には解説を読むまで気がつかなかったのだけど、伏線だったのか。既読であれば、じゃあ「ポテチ」じゃなくても良かったんじゃないの?という話になるかと思うが、やはり「テーマは深く」「ノリは軽く」「淡々と事が運ぶ」という作風に合うのは、やっぱり「ポテチ」かなあ、と思う。


 総評としてはまあまあだろうか。伊坂ワールド好きなら確実に買い。なんとなく、伊坂幸太郎が「白夜行」を書いたらどういうことになるだろうか、と妄想しながらおやすみなさい。