都市と星

「都市と星 新訳版」(アーサー・C・クラーク)読了。
人間は、停滞と亢進とを繰り返す不安定な存在なんじゃないかな。

都市と星〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF ク)

都市と星〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF ク)

 都市「ダイアスパー」だけが永遠に挑みつづけていた。宇宙をあまねく占有した人類の時代は終わりを告げ、わずかな人類が閉鎖された都市のなかで不自由なく生活している。そのなかで特異点とも言うべき主人公アルヴィンは「成人」を迎え、ダイアスパーの停滞を揺るがすことになる。
 ……と書いてもイマイチわかりにくいな。まあ、「人類の行く末」を長編SFの年代オーダーで描くような作品が好きな人は絶対おもしろいはず。イーガンとかね。ラヴクラフト要素もあるので、そういうのが好きな人もぜひ。
 人間はミクロで見ても、マクロで見ても、停滞と亢進とを繰り返す不安定な存在なんじゃないかっていうのは最近思うところ。永遠に進み続ける、開発し続ける、成長しつづけるっていうのは「不安定」だと誤解することがあるけど、それは思考としてはかなり「安定」しているのではないか、と思う。
 個人レベルで見れば、情熱的に仕事をこなしていこう、というスタンスと、もっとのんびり生活したいというスタンスが交互に訪れることが一般的かと思う。社会レベルで見れば、成長至上主義のあとには生活回帰型の思想が流行することは明らかである。
 んで、人間はそもそも「不安定」な存在であって、ずっと進み続けることには耐えられないし、一方でずっと停滞することにも耐えられないのではないか。なにが耐えられないのだろうか?思考?退屈してしまうのかもしれない。やっぱり人生のラスボスは「退屈」なのかな。
 本書のタイトル「都市と星」も停滞と亢進を指している。「都市」は停滞の象徴であり、「星」は亢進の象徴である。どちらが良い悪い、ということではない。人間は本質的に、そのふたつの極を行ったり来たりしないと退屈してしまう存在なのである。
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