反戦軍事学

反戦軍事学」(林信吾)読了。
反戦を唱えたければ、軍事を知れ。

反戦軍事学 (朝日新書)

反戦軍事学 (朝日新書)

 「学」に「反戦」という意見が付加されている、というところに違和感があるか、と言えば、ある。筆者は自ら軍事についての膨大な情報に触れ、最終的に「反戦」というスタンスに至ったということだ。「反戦軍事学」を読むにあたって、読者が、いや僕が知りたかったのはなぜ著者が「反戦」というスタンスに至ったのか、というプロセスであった。著者はその軍事に対する知識と洞察を以て、いかにして「反戦」に至ったのか?それが知りたかった。
 もちろん、一般的な読者がそもそも「反戦」というスタンスに立っているという前提は正しいだろう。そして、そういった人々こそ軍事から目を背けてはいけない、という指摘も的を得ている。
 しかし、「反戦」のためのツールとしての軍事学というのと、軍事について学んだら「反戦」になったというのは、明らかに、違う。
 もし本当に、論理的に詰めていくだけで後者になるのだとしたら、それは願ってもないことである。ただ、現実的に考えて「軍事に関する正確な情報を適宜仕入れ、判断する」ということはほとんどありえない。
 だが、「反戦」に至る、軍事学からの論理的なパスが存在するならば、目先の知識では惑わされないコアとなる思想ができるように思う。不完全でもいいから、それが読みたかった。
 軍事にある程度詳しい方は、多少浅く感じるのかもしれないが、まったくの素人である僕からしてみると、新鮮な話が多く、なかなか楽しめた。
 個別具体的な話はともかく、「反戦を唱えたければ、軍事を知れ」という著者のメッセージは、確かに受け取った。
※本書は、本が好き!経由で、朝日新聞社様から献本頂きました。ありがとうございます。