小説家という職業
「小説家という職業」(森博嗣)読了。
「森博嗣」というブランドはどうマネジメントされていたのか?
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2010/06/17
- メディア: 新書
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本書で一番驚いたのは、森博嗣がどうやって自著を、というか「森博嗣」というブランドをマネジメントしていたか、ということ。
作家を将来にわたってプロモートするようなビジネス戦略を、出版社ではまったく、誰一人考えていないのだ。小説家にはマネージャーがいない。出版社はしてくれない。だから自分で自分の作品のマネージメントをしなければならない。
というわけで、読者が本を所有したくなるように、いつか読み返したくなる、読み返したときに再び発見があるような作品構成にしたのだとか。
あ、「出版予定をどんどん先へ延ばす可能性があります。そうする理由があります」の「理由」ってそういうことか。
さらに、よくわからない謎を散りばめれば、その解決を求め、読者はネットに出る。そこで情報のやりとりが行われることで、他の読者の存在を意識させる。これによって、より作品への関心を高める、というところまで構想していたのだとか。
だから、僕が「εに誓って」を読んだときに書いた、
あ、そうだ。Gシリーズが面白くないと言っている方々へ。感想ブログをいくつか見て回ったけど、結構いるみたいだ。それはたぶん、ひとつの事件のトリックに期待しているからだと思う。(中略)そうじゃなくって、シリーズを通してのトリックというか謎というか、を考えると面白いと思う。シリーズが出揃ってから、一気に読むというのもありかも。いや待て、シリーズ単位で分かるとは限らない。Xシリーズも絡んでくるらしいから……などとぐちゃぐちゃ考えるのが醍醐味ではないかな?
っていうのはまんまとのせられていたわけだ。
こういうふうに書くと、なんか胡散臭いというか、金儲けに対する忌避感みたいのを感じる人がいるのかもしれないけれど、実際にその本・シリーズにそれだけの価値が付加されていて、その対価を払っているのだから、全然問題ない。と僕は思うけどたぶんそうじゃない人もいるんだろうな。
で、さらに言えば、ここで「全然問題ない」と思うような読者を集められていることが、またすごいわけだ。
もっとも驚いたところはそこらへんだったけど、最も価値があると感じたのは「あとがき」かな。こういうことを書いてくるから、油断ならない。
「アウトプット」することの苦い快感が、まさに生きていることと同値である