ガラパゴス化する日本

ガラパゴス化する日本」(吉川尚宏)読了。
「これからの日本をどうするか?」という議論の前提確認のために必要な一冊。

ガラパゴス化する日本 (講談社現代新書)

ガラパゴス化する日本 (講談社現代新書)

もはや、時代のキーワードとなりつつある「ガラパゴス化」であるが、日本のガラパゴス化には3つの階層があることはあまり知られていない。

日本製品ガラパゴス化(企業)

 ふつうに「ガラパゴス化」といったときは、これを指す。つまり、モノやサービスの規格がグローバルな流れから取り残されてしまうことである。ガラケーガラパゴス化ケータイ)が最もよく知られた例だ。

日本国のガラパゴス化(国家)

 国家としての日本が他国と関係性を持たなくなり、半ば鎖国状態になってしまうことである。東京では問題ないかもしれないが、地方は海外と関係性を持たなくなる可能性も高い。

日本人のガラパゴス化(個人)

 若い世代*1が海外に出なくても、充分満足できる状況が整ったために、海外に出ていかなくなりがち、という話。

ガラパゴス化に向けて

 ガラパゴス化はこの3つの階層で進行しており、どこが脱ガラパゴス化するかで、シナリオはそれぞれ変化する。しかし、どのシナリオを進むにせよ、脱ガラパゴス化のためのキーワードとなるのは以下の6つ。すなわち、リーダーシップ、形式知化、ゲームのルールづくり、水平分業・モジュール化*2新興国での生態系の構築、ハイブリッド化である。
 特に、ゲームのルールづくりは日本人が弱い部分であるように思う。よく、そういった教育がなされていないからだ、という指摘があるが、教育の問題とするよりも、そういった環境が存在しないからだ、と考えたほうがよいかもしれない。
 多くの状況で、ルールがすでに与えられており、与える側も「ルールを与えなければならない」という義務感に囚われている。あるいは、ルールの与え方にも問題があるかもしれない。「これがルールですよ」と明示的に与えることは、思考停止をお願いしているようなものである。そうではなく、「最低限の境界条件だけ設定するから、あとはみなさんでルールをつくってください」というような提示の仕方が必要なのではないだろうか。

*1:これ、自分が使う言葉としてはいつも違和感感じるんですが。

*2:事業などを交換可能な部分に分割し構成すること。ものづくりでも、経営でも使える言葉。