ビル・ゲイツの面接試験

ビル・ゲイツの面接試験」(ウィリアム・パウンドストーン)読了。
「富士山をどう動かしますか?」はサブタイトルに過ぎない。

ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?

ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?

 知的好奇心が半分、就活対策が半分。そんな気持ちで手にとった本書。サブタイトルでもある「富士山をどう動かしますか?」や、有名な「マンホールのふたはなぜ丸いのか?」、難問とされる「南へ1キロ、東へ1キロ、北へ1キロ進むと出発点に戻るような地点は、地球上に何ヶ所あるか?」など、おもしろい問題が並ぶ。
 問題の例はここでもいくつか見れるが、本書は解答がついているのが良い。ただ、「南へ〜」みたいな質問は解が一意に定まると思うけど、富士山の問題を採掘作業としてフェルミ推定に落としこむのは無理があるんじゃないか。富士山だって火山だし、現実性を検証したら、おかしいと思う。富士山を動かさなければならない状況を多少不自然でも設定して、それに沿って解答を導き出すのが「正解」じゃないかな?などと考えることで時間が無限につぶせる。無人島に持っていく本のリストにぜひ。
 パズル面接というのは、うさんくさい。そう思っていたが、ここを読んで、納得した。

パズルが解けなくて不必要にはねられる志望者の中にも、有能な人はいるものと思ったほうがいいだろう。忘れてはならないのは、不適当な人を採用するのを避けるためには、いい人を失うのもしかたないというのが基本方針だったことだ。

ああ、そうか。ようやく「採用試験」の意味がわかった。最大の脅威は、有能な敵ではなく、無能な味方だ、ということ。リスクを最小にするため、安全側で採用すれば、採用試験は自ずとそういうスタイルになるのだ。ピンポイントで成功する人よりも、失敗しない人が採用される。そう言われる理由がやっとわかった。
 パズルそのものもおもしろいが、やはり「富士山をどう動かしますか?」はサブタイトルに過ぎない。この本は、まず第一に「面接試験」というパズルの仕組みを明かす本だったのである。