ポスト3.11のマーケティング
「ポスト3.11のマーケティング」(横山隆治、山本直人ほか)読了。
マーケティングとはなんだったのか?
ポスト3.11のマーケティング 企業は、消費者は、どう変わるか?
- 作者: 横山隆治、山本直人ほか,デジタル・コンサルティング・パートナーズ
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2011/07/07
- メディア: 単行本
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目次
脱「自粛」による日本の再構築
震災後のメディアとマーケティング
逆境に打ち勝つマーケティング・イノベーション
東日本大震災で明らかになったソーシャルメディアの限界と可能性
ネットの言葉は人を結ぶか―ツイッターが紡ぐポスト震災のマーケティング
Do the Right Thing―商品選択視点は「正しい」に向かう
Making is Connecting―震災後に立ち上がった「メディア」たち
変わるマーケティングの変わらぬ使命
社会を加速させた事件。これが、僕の持っている東日本大震災に対するイメージである。世の中がやらなければならないこと、やるべきことがたくさんあるなかで、多くのことが後回しにされてきた。それはいずれ解決されるべき課題だが、今取り組む必要はない。他にもやることはある。そうして目を逸らし続けたことが、この度の震災で「ああ、やっぱりやらないとダメなんだな」とマジョリティが実感し、実際に行動に移し始めた。そういう意味で、社会があるべき自然な方向へと加速したのである。
災害の対策を根本的に見直す必要があるはずだが、災害は今すぐ来るというわけでもない。原子力はいずれ全廃されなければならないが、それはずっと未来のことだ。TwitterやFacebookなどのSNSを利用してコミュニケーションをとる必要があるような気がするが、実際はそれほど必要ないかもしれない。そう考えていた/考えていなかった人が、みなハッとした、ということだ。そして、本来あるべき方向に向けて、動き出した。
マーケティングに関しても同様のことが言える。マーケティングとはなんだったのか?もちろん、「顧客を商品に引きつけるためのビジネスツール」という側面はあるだろう。しかし、そういった定義は終焉に近づいている。もちろん、そのような定義でマーケティングを行なっている企業も終焉に近づいている。
8人の著者が、大筋はほとんど同じだが、丁寧に見ていくと異なるマーケティングの定義をしている。僕が考えに一番フィットした定義はこれだ。
マーケティングとは一言で言えば「製品やサービスと生活者の間にあって、購買行動を円滑に活性化させる行為」ということになる。
著者のひとり、田中義啓氏の言葉である。そう、マーケティングとは本来こうあるべきなのだ。就活が「優れた人材を採るため」にではなく「自社にフィットした人材を採るため」にあるように、マーケティングは、人とモノ・サービスとの摩擦係数を小さくし、多くも少なくもなく必要なところまで行き渡らせるための手法であるべきだ。
そして、他の「べき」が震災によって加速したように、マーケティングも、この方向へ加速した。具体的にどう加速したのかについては、本書にすべて、書いてある。
※本書は、Fansfans(AMNブッククラブ)経由で、朝日新聞出版様から献本頂きました。ありがとうございます。