地球の長い午後

「地球の長い午後」(ブライアン・W・オールディス)読了。
植物の成長に怖さを覚える。

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)

地球の長い午後 (ハヤカワ文庫 SF 224)

 SFはストーリーではなく、設定で物語る。あらすじを語ればなんということはない。植物が大繁栄する世界で、人間の生き残り(知能がちょっと低い)が生存をかけてさまよう、というような話である。異種族(?)が出てくる後半はファンタジーのようでもある。
 しかし本作は、ファンタジーとして読むというよりはむしろ、ナショナルジオグラフィックチャンネルを見ているような雰囲気だろう。月までツルを伸ばし新天地を築く植物、跳躍してヒトを襲う植物、高度な知能をもち他の生物に寄生するキノコ、ヒトをチューブで繋いで飼い慣らす樹木。この雰囲気は、まさに「地球の長い午後」というタイトルが言い表している。
 想像上の生き物ということで言うと、鼻行類、フューチャー・イズ・ワイルド、アフターマン、いずれもおもしろいが、植物に焦点を当てたものは少ない。やはり、動物のほうがインパクトがあるからだろうか。
 しかし、生物の変容ということで言うと、わりと秩序のある(ように見える)動物の変化より、見境のない植物の成長の仕方のほうが、人間の想像力の異常さによく馴染むような気がする。進化と成長は別ではあるものの、廃墟に蔓延るツタのイメージというか、アスファルトをかち割って成長する根など、枠に囚われずに無限に成長していくかのような錯覚を覚えるのは、やはり動物でなく、植物である。
 未読だが「人類が消えた世界」という本がある。人類亡き後の未来予測という点で、生物に的を絞っているわけではないが、これも読んでみたい。