「助けにきたんですよ。瀕死の日本を」

「ハゲタカ」(真山仁)読了。
これは、すごくおもしろい! 以下、ネタバレあるかもです。

ハゲタカ(上) (講談社文庫)

ハゲタカ(上) (講談社文庫)

 ストーリーにおいて、「勝つ」ということは肯定を意味する。僕が注目したのは2人の登場人物。「日本を買い叩く」外資ハゲタカファンドのトップ鷲津と、体制と信念の間で揺れ動く企業再生のプロ芝野。
 2人とも、万能の存在、というわけではなくて、むしろ、ストーリーは彼らが思い悩むところに焦点が当たっている。だから、彼らのあり方の違いが「決戦」の行方を左右した、というのが物語的な解釈だろう。
 2人とも、日本の体制が問題であることがわかっている。バブル期に後先考えず抱え込んだ債権や土地をどーすんの?ということに対処しようとしない体制だ。
 鷲津は「清濁併せ呑む」タイプの人間で、「カネに色はない」という言葉を好むあたりにその性格が現れている。ので、彼は外資のカネの力で「買い叩く」。最後まで「日本的」な人々には敵視し続けられるけど、探し求めていた答えに辿りつく。
 芝野は「日本的なもの」を無視してすべてをぶっ壊したりはしない。経営陣のリストラなどは断行はするものの、その立ち回りは「日本的なもの」との距離感を適切に維持している。だけど、結局終盤で、自らの正義感を利用されて、自分が最も力を貸したくなかったものに協力していた過去に気づくわけで。
 やっぱり、モチベーションの色が違うなーと。鷲津はなにで動いているんだろう?父が「なぜ死ななければならなかったのか?」という理不尽さを解消するため、と言えるかもしれない。こういう動機づけのところは、わりと日本的だな。
 これに対して芝野の動機づけがちゃんと説明されきっているようには見えない。悪いものは悪い、という正義感である、としか書かれていないような。そういうまっすぐな力は強いけど、同時にとても脆い。というような話としても読めるかと。