テクノロジストの条件

「テクノロジストの条件」(P・F・ドラッカー)読了。
なんでテクノロジストが大事なの?

テクノロジストの条件 (はじめて読むドラッカー (技術編))

テクノロジストの条件 (はじめて読むドラッカー (技術編))

目次
プロローグ 未知なるものをいかにして体系化するか
Part1 文明の変革者としての技術
1章 仕事と道具
2章 古代の技術革命に学ぶべき教訓
3章 近代を生み出したものは何か
4章 IT革命は産業革命になれるか
Part2 技術のマネジメント
5章 知識労働の生産性
6章 ベンチャーのマネジメント
7章 つくるだけでは終わらない
8章 技術をマネジメントする
Part3 イノベーションの方法論
9章 方法論としての起業家精神
10章 イノベーションのための組織と戦略
11章 既存の企業におけるイノベーション
12章 イノベーションの機会はどこにあるか
Part4 世界観の転換
13章 分析から知覚へ
14章 知識の意味を問う
15章 ポスト資本主義社会の到来
エピローグ 新技術は世界をどう変えつつあるか

 はじめて読むドラッカーシリーズ4冊目。今回は「技術編」。技術と社会はどうやってお互いに影響を与え合ってきたか?イノベーションの重要性はどこにあるのか?イノベーションを体系的に生みだすにはどうすればよいのか?そういった技術についてのエッセンスである。

今日必要とされているのは「テクノロジスト」

 本書の内容を一言で言えば、これ。もちろん、科学者も技術者も必要ではあるけれど、数が必要なわけではない。というか、現状では足りている。むしろ、今の社会に不足しているのは、技術をマネジメントする者、すなわちテクノロジストである。ということだ。
 就活をしていると、この考えは「意識の高い(笑)」理系院生にかなりよく浸透しているのがわかった。医療系、バイオ系、化学系ではこういうふうに考える人が多いような気がした。日本には技術そのものはある。しかし、その使い方、つまりマネタイズの仕方とか、特許の扱い方とか、そういうのが下手だよね、という考えと合わせて。

必要とされる体系

 そういう、就活で会ったみんなの言っていることはその通りなんだけど、ドラッカー先生と決定的に違うのは、なんでテクノロジストが大事なの?ってとこ。
 せっかく技術があるのに使えないのは勿体ないことだ?うーん、科学者/技術者マインド的には理解できるけど、それだけだ。日本の競争力が下がっているから、その状況を打開しなくては?まあ、そうだけど、だとしたら、別の道、例えばコンテンツ産業とかもよくね?という話になるように思う。本書では、テクノロジストがわれわれの文明に根本的に必要な理由が書いてある。

それは、システム、有機体、状況のいずれであれ、普遍的かつ具体的な現実としての全体のコンセプトを与えるべきものである。発展、成長、腐敗など定性的かつ不可逆の変化についての体系である。さらには、変化の予期を可能とする厳密な体系である。原因ではなく方向性を示す体系であり、蓋然性ではなく可能性の微積分を可能とする体系である。

すなわちそれはマネジメントである。と続きそうな気がしたが、そうではなく、イノベーションである、ということだ。先日のプランク・ダイヴにもあったが「歴史は道を示してくれない、進化もぼくらを導いてはくれない」。だったら、文明を跳躍させる方法を体系化するしかないじゃないか!

 それが、イノベーションだ。もちろん、イノベーション=新しい技術の発明ということじゃない。新しい技術をなにかに使えるようにして、初めて価値が創造される。ここの価値を産む仕事ができるのは、テクノロジストしかいない。技術を知った上で、それをマネジメントすることができる人間しかいない。

イノベーションは「天才のひらめき」ではない

 そうしたイノベーションは「天才のひらめき」によるもの、と誤解されがちだ。しかし、そうではない。イノベーションはただの「よい仕事」だという。成功したイノベーションのほとんどは、「イノベーションの機会に対する体系的な探求から生まれている」とも。
 イノベーションが天才さと直結しないように、イノベーションは「起業家気質」とも直結しない。大きな企業でも、ベンチャーでも、起業家でも、学者でも、音楽家でも、イノベーションは可能である。それは、イノベーションが体系だからである。