シェムリアップ/バッタンバン行ってきた

研究半分、遊び半分な気持ちでカンボジアへ。アンコールワットのあるシェムリアップへ行くのがふつうだけど、今回は研究の都合で、まずは少し南西にあるバッタンバンという街へ。

シェムリアップカンボジアでは大都会だ。中国や韓国、ヨーロッパ、そして日本の観光客が大量に押し寄せ、外貨を落としていく。それに対して、バッタンバンは地方都市の風格を見せる。まずもって、ホテルの値段が40$と15$であるところに物価の違いを感じる。

トンレサップ湖を反時計回りにぐるりと廻るようにしてバッタンバンへ向かう。今は乾季だからトンレサップ湖メコン河に水を供給していて、縮小している。これが雨季になると、メコン河の水がトンレサップ湖に流れ込み、どんどん膨張するのだ。メコンの遊水地、というわけである。

ヤモリ。ヤモリヤモリ。いたるところにヤモリがいる。レストランからホテルの客室のなかにもいたりする。虫がたくさんいるし、あったかいし、最高の環境なんだろうな。クメール語では「チンチョ」みたいに呼ぶらしい。夕方頃になると、チッチッチッチッ、と聞こえてくる鳴き声はたぶんこいつらだろう。英語ではgeckoというが、もし鳴き声をもとに命名しているんだったら、チンチョのほうがここではしっくりくる。


ここら辺は雨季にはトンレサップに沈む。橋がないエリアでは、バイクが舟で移動しているのも印象的である。帽子がないことに気づき、高級め(少なくとも現地では)の服屋へ入る。グッチのトランクス。カルバンクラインのTシャツ。もちろんフェイクだ。Gショックの帽子(笑)も捨てがたかったが、アングリーバードの帽子を買っておく。もちろん、スマホでアングリーバードをやっているはずもなく、どうやらキャラクターそのものと、短いアニメもどきだけで人気を獲得しているらしい。

Angry Birds Rio Samba

Angry Birds Rio Samba

川に浸っていると、現地の子どもがやってくる。ハロー。これは通じるらしい。他の言葉はよくわからない。しかし、"Angry Bird!!"これは知っているようだ。女の子はキティちゃんの服を着ていたので、kittyと言ってみたが、よくわからなかったみたい。"Angry Bird!! Bye-bye!!" 観光地で言われた「ヤスイ」「アジノモト」「ナンデヤネン」よりは、こっちのほうが心地良いコミュニケーションである。


よく、東南アジアに行ってきた日本人で「彼らは貧しかったが、しかし日本人よりも幸せそうに暮らしていた」という人がいるが、僕はそういう感想にはとても違和感がある。そういう感想は、自分の見たいところだけを見た結果か、あるいは本を読んで先入観を持って見たときのものに過ぎない。
 「オニイサン、ヤスイヨ、ワタシ、カワイソウ」と他国のコトバで言わなければならず、ほんの4才から5才くらいからそういうことをして、それが日常の一部になっている。「貧しいが、幸せ」という意見の裏に隠れているのは、むしろ私たちこそが不幸だというようなメンタリティだ。それは、要するに「ワタシ、カワイソウ」と同じことである。当事者意識がないにも関わらず、そういう発言をするおこがましさ、というのは信じられない。


神経質な話題からは少し離れよう。食べ物はやはり魚がおいしい。僕は呼吸器は弱いが腹は強いので、周りの日本人が次々とお腹をこわすなか、特に問題なくいただく。基本はキャットフィッシュ(ナマズ)かスネークヘッド(俗に言う雷魚)。ナマズは意外と扁平で日本のナマズに近い。スープとかがおいしい。スネークヘッドは丸焼きみたいにしてあるのがなかなか良かった。


調査の途中に、近くの寺院に寄る。Prasat Bananというところ。360段の急階段を、蛇の神ナーガの手すりにつかまりながらなんとか登ると、5つの塔を持つ寺院が現れる。後で調べたことだが、どうやらアンコールワットのモデルになった、という説があるらしい。証拠はないらしい。


裏手に回ると、「地雷に注意」である。バッタンバンはポルポト派の中心地だったそうで、ここも高射砲が置いてあったりしたらしい。線香の香りが、一瞬、硝煙の匂いに錯覚させられる。戦争との距離感が一瞬だけ縮まった。


シェムリアップに到着し、お待ちかねのアンコールワットへ。世界から集う観光客の賑わい方は、まるで京都のようだ。それにしても、アンコールワットの模様の入れ方は狂気じみている。壁画や柱はいいとして、なんでもない壁や、柱の裏側にまで、びっしりと模様が刻まれている。しかも、そのひとつひとつがかなり精巧に彫られていて、まるで、なにも刻まれない空間を怖れているかのようだ。


小さいナーガのついた、頭のもがれた像。色々な動物神があったけど、僕はナーガ(蛇)が好きかな。ガルーダという鳥の神がいて、装飾とかだと、ナーガが上に、ガルーダは下に配置されていることが多い。ナーガは土着神で、ガルーダは外来神だから、偉さが違うのだろうか。


これがガルーダ。やはりアジア圏は多神教である。神や動物をキャラクターのように捉えて、そこに意味を載せていく。アングリーバードが人気なのも、そういうところから来るのかもしれない。台湾でもベトナムでも見たが、ヨーロッパではグッズがお店に売ってるのを見たことがないからなあ。


最後にインフラ遺跡。ほとんどの遺跡は寺院だが、これは橋だ。もともと橋があった場所を回避するように川が流れていて、橋だったころの面影はほとんどない。それでも、等間隔に並んだ橋脚がその名残を見せていた。