タカイ×タカイ

タカイ×タカイ」(森博嗣)読了。
Xシリーズの3つ目。ネタバレありかも。

 もうね、完全に個別のトリックを推理しようとしなくなってしまった(僕が)。XシリーズとGシリーズが絡みあって進行しているとすれば、これでXが3/6、Gが6/12で、ちょうど折り返し地点なんだけれども、いまだに全体像への糸口は見えない。
 仮面のマジシャンさんは「幻惑の死と使途」に出てきた人なんだろうけど、それがどうつながるんだろうか?ただのファンサービス?まあ確かに「今回の事件は関係ない」というような発言があったようなので、関係はないと素直に捉えていいんだろう。で、そうすると、このXシリーズとGシリーズを絡めているのはなんでなんだろう、と思うわけで。やっぱり、ほろ……ゲフンゲフン椙田がなにをしているか、というシリーズなのかな?
 マクロな話ばかり書いたけど、もちろんひとりひとりの会話もおもしろくて、そっちのほうが売りになってるかもね。で、そういう会話のおもしろさというのは、たぶん1対1の関係性を丁寧につくってあるからだなあ、と思う。某見かけは小学生探偵とか、午後やってるサスペンスとかの殺人の動機って、すごく納得できるものが多い。多いんだけどなんともステレオタイプであって、まあ、なんというかな、記号的だよね、と。丸を書いて周りに線をいくつかつけ足すと、これは太陽です、みたいな。実際に太陽を見てもそういうふうには見えないわけで。
 動機だって同じことだ。椙田と西之園の関係、鷹知と小川の関係、真鍋と永田の関係、牧村と横川の関係、三澤親子の関係。この辺を物語的な記号で書いてるんじゃなくって、リアルに(と言っていいのかわからないけど)つくってあるから人間関係の力学がうまくストーリーを支えているし、ただの会話もオモシロイと思えるんだろうな。
 やっぱりドライな印象を受けるけど、実際はドライではなくて、感情を爆発させたものが勝ち!とか、感動しなきゃねみたいなドラマの趣向とは真逆の、そういうドラマを隠しながら、堰をきって溢れ出さないように溢れ出さないようにとしているようなギリギリ感みたいなものがいいんじゃないかな。奥ゆかしい、とはちょっと違うんだけど、最大ではなくて極大というか、曲がサビに入る直前の高揚感、みたいな。そういうセンスを感じる。