リスペクトって、原作に忠実なことじゃないだろう?
「トーマの心臓」(森博嗣)読了。
「憧憬」というのは、難しい感情だと思う。
トーマの心臓 Lost heart for Thoma (文庫ダ・ヴィンチ)
- 作者: 森博嗣,萩尾望都,原作:萩尾望都
- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
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- 作者: 萩尾望都
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いろんな人の感想を読んでみると、なんで舞台がドイツじゃなくて日本なんだ、とか、ユーリの身になにが起こったかがぼかされている、とか、そういう意見があったのだけど、想定読者が「トーマの心臓」を読んだことがない人なら、それもそうだろう。
「原作を読んだときの「新たな」感動を損なわないためでもありました」とあとがきにはあった。「リスペクト」=「原作に忠実」ということではないのだな、と気づく。自分のつくったものが、素晴らしいものに触れるきっかけとなるだけで、十分幸福だ、と。そう思える一瞬は、貴重なものだと思う。
あ、そうか。そういうリスペクトが、次のコンテンツを手に取る最強の動機なんだな。今でこそ、無名の僕のような人間が書評のマネゴトをしているけれど、本来、書評とかそういうものって、名のある人がすることだったんだよね、たぶん。で、すごい人が、リスペクトに耐えうる人が「この本は素晴らしい洞察だ」と言って本を薦める。あの人がそんなに薦めるなら素晴らしいものに違いない、といって本を読むことが、自分の身の丈では届かない領域、あるいは交わることのなかったはずの世界を見せてくれる。さて、年が明けたら、漫画版を読んでこよう。