水道が語る古代ローマ繁栄史

「水道が語る古代ローマ繁栄史」(中川良隆)読了。
ローマはすごい。でも、「水道」というシステムはもっとすごい。

水道が語る古代ローマ繁栄史

水道が語る古代ローマ繁栄史

目次
序章 古代のローマ水道の意義と評価
第一章 古代ローマは、どのように下水の処理をしていたのか
第二章 古代ローマはなぜ長大な水道を造り、トンネルや水道橋を多用したのか −古代ローマの水道幹線の話
第三章 七つの丘の町と称され、起伏に富んだ首都ローマ全域に、どのように動力もなしで給水できたのか −ローマ水道の市内給水の話
第四章 大規模な公共浴場は、なぜ造られたのか −古代ローマの泉と浴場・水車の話
第五章 大規模な施設は、どのように造られたのか −古代ローマの水道建設技術の話
第六章 なぜ古代ローマは水道を最重要視したのか −水道を通して見たローマの繁栄
ローマ水道・江戸上水等に係る年表



 分野によって、好きな時代や文明も異なる。僕の周りでエコエコ言ってる農学関係の人は江戸時代が大好きだ。適度な人口、循環型社会、ゴミの少なさ。そういったことが魅力的に映るのだろう。一方、土木をまじめにやっている人はローマが大好きなようだ。コンクリートの文明誌 - けれっぷ彗星でも、コンクリートはローマで誕生したんだよ、という話が冒頭に登場する。
 そんなローマだけど、水道に関しても並々ならぬ技術力を誇っていたらしく、測量はもちろん、トンネル掘削、サイフォン、ローマの技術力は世界一ィィィ!*1というわけだ。しかし、驚くのは技術そのものだけではない。ローマに造られた水道の管理体制は、技術者集団の組織、トップによる直接的な管理、料金と罰則の規定など、極めて合理的な設計がなされており、再び驚くことになる。
 本書でも言及のある和辻哲郎は、風土―人間学的考察 (岩波文庫)で「ローマの水道は自然の拘束を打ち破り、ローマは水道によって大都市に発展することができた」と述べていた。これは逆に言えば、人間の水に対する依存性が、国家の在り方に影響を与えてきたということだ。そういった意味で、「水道」というインフラ,システムの発見がいかに大きな影響を人類にもたらしたかが理解できる。

蛇足

 連続式をヘロン*2が発見した、という記述があったのだけど、連続式を発見したのはダヴィンチではないのかな?それとも、単に提唱しただけであって、証明したのがダヴィンチ?あるいは再発見?よく分からない。誰か詳しい方いたら教えて下さい。

*1:本当にすごいのは、その後数世紀というオーダーでこの状態が維持されたこと。シヴィル・エンジニアリング限定だけど。

*2:ヘロンの公式のヘロン。三角形の面積求めるやつ。