僕はいかにしてコツコツ型の人間になったか 

 よく、「君はコツコツやるタイプだね」と言われる。褒めているのだろうか?客観的に考えて、たぶんそうだと思う。自分でも自覚はある。しかし、これが、全く嬉しいものではない。僕はコツコツやるのは、短期決戦型ではとても他人に敵わないからだ。加えて、このことが「頭で考えた結果」ではなく、自然に身についてきたからだ。明確な理由を求めるのはナンセンスだし、自分を納得させる程度の意味しかないけど、いくつか理由を思いついた。
 一番の理由は、たぶん、昔から体が弱かったせいだろう。今でこそ体調のコントロールが可能だが、昔は喘息や肺炎など呼吸器系の病気で年に一回は入院していたし、季節が変わるときは必ず風邪にかかった。もちろん体力もない。徹夜なんかできる体ではなかったし、今でもほとんどしない。だから、試験前に「きのう徹夜だったんだよね〜」というわずかに自慢を含んだ自嘲に、心から「いいなー」「すごいなー」と思っていたのである。一度、短期型で試験に臨んだこともあるが、惨憺たる結果だった。まとめると、短期型が向かないことは体が知っている、というところか。
 もう1つは、頭の回転が遅いということ。いや、客観的に見て、絶望的に遅いわけではないけれど、他人と比較した際に「あ、僕遅い」と思うことはままある。そういう状態で他人の思考速度についていくには、多少でも「積み上げて」おくことであって、それでなんとかやっていくことができる。もちろん、これには思考を限定する恐れもあるので、一長一短だ、とは思う。それでも、積み上げるなら、長期型のほうが便利。これも、20年弱経験してきていることなので、そうそう変わらない。
 最後に、心配性なこと。アメリカ人はポジティヴな希望でモチベーションが上がり、日本人はネガティヴな危機感でやる気になる、みたいな文章をどこかで読んだけど、そんな感じ。「試験前にやればなんとかなるでしょ」みたいな思考はとてもできない。「今やらなくて大丈夫なのか」「後悔することになるぞ」という声が、期限よりだいぶ前から脳内で響く。これはもう、性格みたいなもので、結構改善してきたつもりだけど、たぶん消すことはできない。
 というような理由。コツコツやるのって、そんなにいいことなんだろうか?そういうふうにやるほうがプラスになる人が自然にやるものなんじゃないの、と思うのだけど。