土壌と地盤

 先日、友人に「土壌の研究室には誰がいるのか?」ということを訊かれたのだが、まったく話がかみ合わなかった。それもそのはず、その人は「土壌」を「地盤」の意味で使っていたのだ!
 農学部では、基本的に「土壌」という言葉が頻出する。英語では"soil"。人によって定義はまちまちだが、風化作用と生物作用でつくられる無機物と有機物の混合物だ。狭義では地表から1m分くらいしかない。つまり、土壌とは、農作物を作る際や、森林を育てる際に重要な土の一部である。
 これに対し、「地盤」は土を力学の対象として捉える。英語では"ground"。構造物を土の上に造る際は、土を構造物を支える土台として捉える。このとき、土は「地盤」になる。
 どちらも同じ「土」であるが、認識の仕方によって、「土壌」であったり、「地盤」であったりする。こういうことは、専門分野が広がるときや、他の分野を除いてみるときに見えてくる。
 そして、一度「違うものだ」と認識してしまうと、違いを認識していない人と話を共有しにくくなる。っていうかこれは想像力が足りないだけか。えっと、なにが言いたいかというと、同じものをいろいろな視点で認識できるようになると楽しいよ、と。正確には、その過程かな。「そんな捉え方があったのか!」みたいな。