アジアの流域水問題

「アジアの流域水問題」(砂田憲吾ほか)読了。
Rivalの語源はRiver。

アジアの流域水問題

アジアの流域水問題

第1章 アジアにおける河川と流域水管理
 1.1 アジアの河川流域
 1.2 アジアの水文・水資源と社会構造の多様性
 1.3 人口の増加と水資源
 1.4 流域水管理とその理解の方法

第2章 洪水が中心となる流域水問題
 2.1 長江流域
 2.2 メコン河流域
 2.3 チャオプラヤ川流域
 2.4 ブランタス川流域

第3章 水不足が中心となる流域の水問題
 3.1 シルダリア川流域
 3.2 ユーフラテス川・チグリス川流域
 3.3 ヨルダン川流域

第4章 水不足が中心となる流域の水問題
 4.1 ガンジス川流域
 4.2 サイゴン・ドンナイ川流域

第5章 流量変動の将来予測と流域水政策
 5.1 気候変動が及ぼす流量変化の予測
 5.2 アジア地域の流域比較と横断的評価

第6章 水問題の克服と課題
 6.1 自然共生型流域圏・都市再生シナリオ
 6.2 アジアに軸足をおいた河川環境情報等のネットワークの構築
 6.3 開発と環境問題
 6.4 水問題対応技術移転に必要な方策
 6.5 流域水研究の新しい流れ
   6.5.1 研究の意義と分野の結集
   6.5.2 流域水管理とその実践のために

 本書は「あるべき論」に深く踏み入る本ではなく、アジアの大河川流域の現状・問題を中立的に概観できるもの。そういえば、
日本とメコン川流域5カ国、経済・産業分野連携で合意
だそうで。国際河川っていうのは難しい。メコン川は、中国、ミャンマーラオス、タイ、カンボジアベトナムの6カ国を流れている。「5カ国」ということは、中国は入らないということか。まあ、今回は「経済・産業分野」だからしょうがないのかもだけど。
 僕が「流域」という言葉を初めて知ったのは高校の頃だった。山・森林から河川、海までがひとつの連続体で、環境保全にはこれらを一体として管理しなければならない、という考えに熱心だったときのことだ。「流域」はその考えを一言で象徴できる画期的な単語だった。
 しかし、土木分野を垣間見ると、どうも「流域」という概念は決して新しいものではないらしいのだ。19世紀末の技術者デ・レイケでさえ言及していた。これには面食らった。だって、そうだろう?そんな考えがあるなら、どうしてこんな開発の仕方になったのか。どうやら、問題は「部分最適」と「目標がずれていること」なんかにあるのかな、と最近は思う。
 アジアの流域圏は、日本のそれとは比較にならないほど大きい。ましてや、メコン川みたいな国際河川もある。しかも、政治の問題などと結びついていることも多い。例えば、パレスチナ問題には、明らかに水紛争としての側面がある。
 こういう資源の問題を政治・民族・宗教だけで語ってしまう人がたまにいらっしゃるのだけど、そういうのはぜひやめていただきたい。資源問題を解決すればすべてが解決すると言えるほどおめでたくはないけど、どちらが「基盤」かを考えれば、現状のプライオリティの付け方がおかしいことはすぐに分かる。
 あ、ひじょーにどーでもいいのだけど、表紙の地図の海岸線さ。日本のだけやけに詳しいんだよね。ふしぎ。地図をつなぎ合わせたのかな?