新訳!種の起源!

種の起源 上」(チャールズ・ダーウィン)読了。
光文社古典新訳文庫で出るなら読むしかない!

種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

種の起源〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

目次
訳者まえがき
第1章 飼育栽培下における変異
第2章 自然条件下での変異
第3章 生存闘争
第4章 自然淘汰
第5章 変異の法則
第6章 学説の難題
第7章 本能

 実は岩波文庫の「種の起源」は未読だったので、この機会に読んでみることに。下巻が出るまで我慢しようと思っていたのだけれど、つい買ってしまった。 

これまで、ナチュラリストは「博物学者」、ナチュラルヒストリーは「自然史」と訳されることが多かった。しかし、ダーウィンナチュラリストと呼んでいる人物の多くは在野の自然観察家や昆虫マニア、園芸家であったりすることが多く、いわゆる「学者」のイメージにはそぐわない。そこで本書はすべてそのまま「ナチュラリスト」で統一した。

 引用は「訳者まえがき」より。つまり、進化論を支えたのはプロフェッショナルの集めた証拠というよりも、アマチュアの集めたものが多かったっていうことか。こういう傾向があるのって生物の分野くらいなのかな。それとも、これからは他分野でもアマチュアが強くなっていくのか。クラウドソーシングって近い?あまり詳しくないから分かんないけど。
 今回、はじめて「原典」に触れたわけだけど、世の中にあふれる記述に、どれほど進化論についての誤解や曲解が含まれているのかよく分かった。ドーキンスの「利己的な遺伝子」を読んだときと似たような感想。
 まあもちろん、中身に関しては、高校で生物を比較的まじめにやってきた人なら、目新しいところは少ない。文章もそれほどうまいとは思わない。それでも、取り上げる具体例のバラエティの多さ、飼育時の変異から切り込んでいくところの鋭さ、節々に現れる創造説への攻撃などには、感嘆する。
 驚くべきは、「遺伝」というメカニズムがほとんど解明されていないにもかかわらず、ほとんど正確に「遺伝」の存在を認識しているところだ。メンデルの法則が発表されるのが1865年、種の起源が発表されたのが1859年だから、おしいと言えばおしい。ただ、実際は1900年のメンデルの法則再発見まで待たないといけないから、遺伝の解明から40年以上前に、ダーウィンは「気づいていた」ということになる。
 ちなみに、Amazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」を岩波文庫版と光文社文庫版で比較するとおもしろい。岩波文庫版はダーウィンドーキンス関連の本がずらっと並ぶのに対し、光文社文庫版は光文社古典新訳文庫がずらっと並ぶ。読者層の違いがよくわかる。

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