維持管理のはなし

朝日新聞社:121橋が崩落寸前、国交省調査 財政難で補修進まず
ということで、公共構造物の維持管理がヤバそう。まあ、「崩落寸前」というのが言いすぎなのは置いといて、注目したいのはここ。

(1)大型車などの強い荷重が繰り返しかかることで生じる「金属疲労」(2)コンクリートが膨張して鉄筋の破断を招く「アルカリ骨材反応」(3)塩害による鋼材の腐食――が主な原因。

 なるほど。この辺の「金属疲労」「アルカリ骨材反応」「塩害」は、当時(1960年代)ほとんど分かっていなかったことだと思う。今でこそ大学でも教えられているけどね。
 アルカリ骨材反応っていうのは、骨材(砂利)のなかの鉱物が、アルカリ金属イオンと反応して膨張、ひび割れを引き起こす現象。このアルカリ骨材反応が問題視されたのは1980年代で、その後研究が進んで、対策がJISに盛り込まれたのは1989年になってから。塩害も、高度経済成長期には多量に使われていた海砂や、道路凍結の防止剤が問題だということは、当時は広く知られていなかったことだと思う。
 要するに、上の記事で問題視されている1960年代には、その機構がよくわかっていなかった、ということになると思う。だから仕方ないってことでは全然ないけど、工学では、結構わからないことが多いままやっているということが、もっと周知されてもいいと思う。リスクが潜在化してることも多い。
 穿った見方をすれば、国交省の財源確保なんだろうけどね。元記事も「財政難や技術者不足が深刻」と書いているけど、長期的な問題はやっぱり金より人だ。人がいなければ、危険かどうかを判断することさえできないし、なにより、必要になったときに用意しようと思っても、金ほど迅速には用意できない。