水ビジネスに挑む

「水ビジネスに挑む」(吉村和就・沖大幹)読了。
水問題の危機感を煽るのではなく「なにが必要か」を考える。

日本人が知らない巨大市場 水ビジネスに挑む ~日本の技術が世界に飛び出す!

日本人が知らない巨大市場 水ビジネスに挑む ~日本の技術が世界に飛び出す!

目次
第1章 水は誰のものか?
第2章 問題が山積する日本の水
第3章 なぜ、水がビジネスになるのか?
第4章 水のマネジメントにこそチャンスがある
第5章 水問題、水ビジネスを考えるセンスを磨く

 最近、ようやく日本でも水ビジネスに本腰が入ってきたようだ。
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それでも、日本の水ビジネスが圧倒的に遅れをとっていることは明らか。その理由はなにかというと、「水は官がやるもの」というメンタリティだと本書は指摘する。

水は官がやるもの?

 僕も海外資本が日本に進出してくるのは怖いなーと素直に思うのであるが、例えばイギリスなどではそうでもないらしい。

ですから、ロンドンっ子は、テムズウォーターという自国の資本で水の供給を受けていたのが、ドイツの資本に変わって、今はオーストラリアの資本によって水の供給を受けているわけです。(吉村)

 これでうまくやっていけるのは、経営を監視する組織と、水質を監視する組織が存在し、民間の水道事業をチェックしているかららしい。
 確かに、その通りだ。事業を民間がやることのメリット(サービスを競争させる)を得て、かつ水質などの安全性を確保するには、こういったやり方がベストだろう。

水問題はローカル

ある国で水をたくさん使った、ある国や地域で非常に水に困っているからといってそのまま他の地域に波及はしないですね。(沖)

 現在、(それが良いか悪いかは別として)最も注目されている環境問題である気候変動の緩和策は「温室効果ガス削減」だ。どの国が、どの地域でCO2を放出しても、温暖化は促進される。CO2排出削減の影響に関しても、場所は関係ない。
 しかし、水はそうではない。日本でのCO2排出削減は世界に貢献可能だが、日本で節水しても、中東で雨が降りやすくなるとか、そういうことはない。この辺が、水に固有な問題である。

濃縮海水という問題

 これはまったく忘れていた。淡水化プラントと言うと、世界の水問題を解決する手段だと漫然と考えていたけど、まだ課題も残る。
 海水から淡水を生成すれば、高濃度の塩水も同時にできるのは当たり前だ。本書によれば、カリフォルニアでの海水淡水化プラントがストップしている理由のひとつは、環境問題であるという。
 となると、水の不足する発展途上国で起きる問題は、だいたい想像がつく。濃縮海水の排出による環境劣化である。どうも、これは後々大きな問題になりそうだ。濃縮海水をうまく使う技術が必要になる。