ミミズと土
「ミミズと土」(チャールズ・ダーウィン)読了。
どうしてミミズなのか……?
- 作者: チャールズダーウィン,Charles Darwin,渡辺弘之
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 1994/06/13
- メディア: 文庫
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第一章 目次
第二章 ミミズの習性
第三章 ミミズによって地表に運び出される細かい土の量
第四章 古代の建造物の埋没に果たしたミミズの役割
第五章 土壌の侵食へのミミズの活動
第六章 土壌の侵食
第七章 結論
解説
ダーウィン最後の著作は、ミミズの本である。進化論を唱えたようなダーウィンがなんで最後にミミズなんてちっぽけな(僕は別にそうも思わないけど)生物を扱ったのだろうか?これにはグールドの解説が参考になる。
かくしてようやく、長すぎるプロローグを終えて、本書の隠されたテーマに到達する。なぜなら、この本は、ミミズの習性に関する論考であるとともに、科学的な方法でいかにして歴史に近づき得るかの探求の書でもあるからだ。
過程の持つ力
宗教的な流れを汲む思考は、一度に起こる大きな変化を前提とする。しかし例えば、土はどうか?遺跡はどうして土に埋没しているのか?ミミズが極めて長い年月をかけて、建造物を「埋めて」いるとしたら?
ダーウィンは進化論を提唱した際も、小さな変化の長期にわたる積み重ねに注目した。つまり、飼育動物の変種の変異である。わずかな遺伝的変異の蓄積。ミミズが土をつくる。ダーウィンは過程の持つ力に注目し、歴史を科学的に検証する可能性を示唆したのである。
その研究の手法も、地道というか、地味というか、地面に這いつくばっている感じである。溝を掘り、ミミズの糞塊やトンネルを毎日毎日、観察する。時には息子や、知り合いの人が観察に巻き込まれる(自主的なのか?)。
実験もとても簡単なもので、やる気さえあればできるようなものばかりである。簡単な手法で、意味のある大きなことを見出す、というスタイルは、研究者として、あるいは技術者として、あこがれるところである。
生態学のさきがけ
上ではミミズの本と言ったが、正確には違う。ミミズが土という環境に与える影響についての本、というのが正しい。ミミズが土を細かくし、地表面に排出し、建造物を埋没させる。
「生態学」というタームをつくったのはヘッケルであると言われているが、生態学(=環境と生物の相互作用)の視点がすでにダーウィンには存在していた。ダーウィンはサンゴ礁の形成に関する著作も発表していたようであるから、生物が環境に与える影響に大きな関心を持っていたのは間違いない。
最近のトピックで言うと、これは、生態系サービスという概念の基礎になっている。ミミズは土をつくる。これによって土壌の代謝が保たれ、植物が利用できる土となる。それによって人間が農業を行える、あるいは水源林が成立し得る。もし、ミミズがおらず、すべて人間の手で行ったらどれくらいのコストがかかるのか、というようなことである。ミミズの土壌循環は、どれくらいの生態系サービスになっているのだろうか?