動機の話

 いろいろ忙しく、一週間ぶりの更新になってしまった。出会う人も多く、なかなか顔と名前が一致しない。
 それなりに有名な建築のデザイン事務所をやめて、土木の修士課程に入ってきた人がいた。すごい行動力だと思う。いったい、彼を動かしたものはなんだろうか?こんど訊いてみよう。
 研究テーマを男女で比較すると、女の子のほうが、ふわふわしたテーマというか、「そんなの研究してどうすんの?」的なテーマが多い。男はたいてい、問題解決型のテーマを選ぶ傾向があるようだ。どちらが良い悪いではなく、そのような傾向にある、というだけだ。理由は、社会の慣性力だろうか?
 なにが人を動かしているか?ということに僕はとても興味があるようだ。一言で言えば、「動機」。どうも、動機を語ることで自分の希望している仕事がしやすくなる傾向が、社会にはあるらしい。もうひとつ、自分を納得させる効果もあると思う。つまり、動機は、自分か、あるいは他人を説得するためのツールということになる。
 自分でも明確な動機などわからないのに、それを他人に説明しなければならない。そういう社会がつくられている。たいてい、説明の仕方としては、エピソードから入り、それを膨らませていき、抽象的な話に昇華する、というパターンだ。ひとつやふたつくらいの経験が動機に成長するのか、というのはとても怪しい。物語の読みすぎかもしれない。明確な動機が存在する、ということもたぶん錯覚だと思う。
 それでも、動機は、周囲を説得するための強力な手段であるのは確かだ。ただ、「動機」というファンタジーがいまひとつ信じられないだけで、それは心のなかにしまっておけばいいだろう。なくさないように。