タゴガエル鳴く森に出かけよう!

「タゴガエル鳴く森に出かけよう!」(小林朋道)読了。
魚をどうやって見分けているの?

タゴガエル鳴く森に出かけよう! -トモミチ先生のフィールドノート (Think Map 5)

タゴガエル鳴く森に出かけよう! -トモミチ先生のフィールドノート (Think Map 5)

目次

ビーチ・リーディングのすすめ ――人類は海辺で進化した?
春の大学林でミロに会う ――クマとシカ(?)にも会ったのだ

森に行こう。タゴガエルの声が響く森に
虫取って! 虫大嫌い! ――子どもたちに翻弄される学生たちの冒険

バーモント州サンショウウオの棲む森へ ――ピーターという人物がいたのだ
トモミチ先生、電車とタクシーに乗る ――“ホモ・サピエンス”と“空間”と“ただ乗り”と

冬の河川敷にアカハライモリの冬眠場所を探して ――三年目にやっと見つけた秘密
晦日の駅前のイベントに行こう ――「地域の中心駅=部族の集会場」という仮説

 こないだ、「魚をどうやって見分けているの?」と訊かれた。その場には魚類に詳しい人が僕のほかにもう一人いたが、その人と声がかぶった。「「雰囲気」」そう、いきものの判別は「アブラビレがあるから…」とか「体高が高いから」とか、そういう図鑑的な手法でやっているわけではない。
 もちろん、同じ属の種を同定するとなると話は別だけど、ちょっと遠くから見て「あれは〇〇かな」って言うのは、そこに生物の細かな特徴を見出しているのではなく、ぼんやりとした、しかし本質的なイメージを見出しているのである。

たとえば、ウォーターバックというアフリカのウシ科の哺乳動物について、私はその動物を特徴づけるイメージを脳のなかに確かにもっている。

そう、この感覚である。生物観察には、こういう明確にハウツーを定められないところがある。本書にあった「なぜ著者だけがヘビを見つけられたのか」みたいな話でも似たようなことが言える。生物観察の技術は極めてファジイであり、そこが面白いところである。
 生物エッセイ好きにとっては、センス・オブ・ワンダーを拡張してくれる、愉快な読書体験だった。しかし、忘れてはいけないのは、イラストもすごい、ということだ。イラストはスタジオジブリの百瀬義行という方。このイラストがまた良いのである。なんというか、アウトドア雑誌のBE-PALっぽい(伝わるだろうか?)。
 確か「保全遺伝学」だかなんだかの難しい本のまえがきに、「生物学を学ぶ学生は、教科書に生物のイラストがあると学習効率が高まることが優位に示されている」みたいなことが書いてあった。それ以来、生物系の本では、イラストを常に気にしているが、本書のイラストは屈指のクオリティである。絵の評価をした経験がないので、拙い表現になってしまうが、イラストも必見である。
※本書は、本が好き!経由で、技術評論社様から献本頂きました。ありがとうございます。