イネ科ハンドブック

「イネ科ハンドブック」(木場英久ほか)読了。
「雑草という草はない」というが、じゃあその名前は?

イネ科ハンドブック

イネ科ハンドブック

 イネ科草本。彼らは、畦道で、河原で、あるいは空き地で、視界の隅にしかとどまらない程度の雑草だ。花をつけず、素朴に生えるその姿は、まさに「ザ・雑草」である。しかし、「雑草という名の草はない」というのは昭和天皇のお言葉だそうだが、そんな雑草たちにも名前があり、多様性があり、人を引きつけるなにかがある。

 もとより、「いきものを見分ける」ということは、そのまま「自然を知る」ということである。何の知識もなしに自然を見渡したとき、そこにあるのは「自然」という一括りのぼんやりした風景である。そこに、「分類」という人間の手法をもって観察したときにはじめて、生き生きとした自然の多様性が見えてくる。

 本書も、そんな自然の見方のツールとなる一冊である。特筆すべきは、群生する様子、1個体、部分拡大(小穂、小花など)という3スケールの写真が揃っていることだ。これでどのようなシチュエーションでも同定できる。

 そういえば、どこかで懐かしさを感じたのだが、同じシリーズの「樹皮ハンドブック」には一時期大変お世話になった(冬でも樹木を同定できる!)。本書も、イネ科っぽいんだけど、なんかよく分からないね、という草本同定対策として出版されたのがよくわかる。フィールド観察をするときの、「かゆいところに手が届く」シリーズと言えるかもしれない。フィールド経験が豊富な人ほど、そのありがたみのわかるシリーズである。

※本書は、本が好き!経由で、文一総合出版様から献本頂きました。ありがとうございます。