祖父の癌が治った

 いや、流石に無理だろうと思っていたが、なかなかどうして、治るものだ。祖父の肺癌が発覚したのが4月。ここで家族会議が開かれ、僕も急遽実家に帰ることになった。

 その時点で癌はハンドボールくらいの大きさになっていて、もはや手術は無理、という状況だった。放射線・レーザー治療も同様。よって、もはや抗癌剤に頼る以外の選択肢はなかった。
 病院で医師と話す。実際、どれくらい抗癌剤が効くのか?という僕の質問に対し、医師が僕にiPadを見せる。まだ新しい論文。母も祖母も理解していなかっただろうが、ほとんど絶望的なグラフだった。
 それでも、すぐに治療を開始するよう、皆で決断を下した。入院が4回。6月頃には、祖父が「癌がこんなに小さくなった」と言ってレントゲン写真を何度も見せてくれた。「あ、すごい!これなら治るんじゃない?」と言いながら、頭によぎるのはいつも絶望的なグラフだった。
 母は「フコイダンだ」と何度も言っていたが、結局「害はないが使っても使わなくても変わらないだろう。自分が精神的に落ち着くためになら有効かもしれない」という話で合意し、結局使うことはなかった。
 そして8月、「治った」との電話。「本が書けるんじゃない?『ガンは治せる!奇跡の闘病生活』とか」治った理由を考えるならば、癌以外は体になんの問題もなかったことだろう。血圧・脈拍も問題なかったし、持病もなし。太り過ぎもせず痩せ過ぎもしないし喫煙もしない。毎朝ラジオ体操をしていたし、生活は規則正しい。
 結局、病気はなってからではなく、なる前が勝負なのかな、とも思う。もちろん、家族のサポートと、決断のスピードも大切ではあるけど。そこまで分析してから、ようやく、ほっと胸を撫で下ろす気分になった。