ウナギ 大回遊の謎
「ウナギ 大回遊の謎」(塚本 勝巳)読了。
ウナギの産卵場探しはトレジャーハンターのよう。
- 作者: 塚本勝巳
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2012/06/16
- メディア: 新書
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しかも、その一生はマリアナ海嶺で生まれ、回遊した挙句に川を遡るのだから恐れ入ってしまう。しかしこのマリアナ海嶺の産卵場所も、特定されたのはつい2006年のこと。本書は、その産卵場所を発見したチームの研究者による、いかに産卵場所を見つけてきたか、というお話である。
ウナギの産卵場所をどーやって見つけるか?
これがメチャクチャ地道でおもしろかった。ウナギは幼生(稚魚よりも前のステージらしい)の段階ではレプトケファルスと言う。平べったく透明で、赤血球もない。去年東大でやってた鰻博覧会では、レプトケファルスがたくさん見れて感動モノだったなあ。
で、産卵場をどうやって見つけるかというと、1,海でグリッド状に何点かでサンプリング。2,サイズの小さい個体が取れた方向に進む……以上。これは地道。もちろん、ある程度海流などから予測はつけられるものの、基本的にはこれを繰り返していくしかない。沖縄付近で60mmのレプトケファルスが見つかったのが1967年。そこから台湾、フィリピン、グアムと移動し、40年近い歳月をかけて、ウナギの産卵場は発見されたということだ。
産卵場を特定する
産卵場の特定の仕方がまたおもしろい。産卵というのは、ある場所、ある時間で行われるものであるから、場所と時間の両方を定めなければいけない。
場所をと言っても3次元だから、地図上のどこかというだけじゃなくて、深さとしてどこか、ということや、地形上のどのポイントなのか、どれくらい海山から離れているか、というところまで特定しなければ産卵場所はわからない。時間と言っても、そもそも何月頃に産卵するのかすらわからない。どんなタイミングで産卵するのかもわからない。こういう、なにもわからないところから色々仮説を立て、最終的に産卵場をつきとめるところは、まさに研究の醍醐味だと思う。
仮説を立てていく過程で、フィリピン海プレートと海山の3D地図が出てくるのだが、確かに自分がウナギならここで産卵するよなーと納得し、感嘆させられた。研究の追体験という意味では、金沢城のヒキガエルに匹敵する名著ではないか。
金沢城のヒキガエル 競争なき社会に生きる (平凡社ライブラリー)
- 作者: 奥野良之助
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2006/01/11
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漁業資源管理とか
出版が今年の6月末だから、ウナギの資源管理が世間を賑わす少し前のことだ。この本はアカデミックの色合いが強いから、基本的には好奇心で読めるけど、漁業資源管理は日本の課題。
漁業資源管理と言えばノルウェーとか、すでにロールモデルがあるはずで、なぜ実行に移せていないのか、すごく気になっている。日本の一次産業戦略が全般的にイマイチなのはわかっている。ただ、利権が絡みまくっってる農業とか、ゴールが設定しにくい林業とかが難航するのはわかるけど、漁業資源に関しては方向性が明確だし、養殖技術の革新も目覚ましいわけだから、スムーズに行きそうな気がするんだけどなあ。意外と外食産業が厄介なんだろうか。この辺は少し調べてみたい。