魚道とミクロ土木工学

 あまりテレビは見ないのだけれど、今日はTBSの「夢の扉」を見た。「あらゆる分野・業種・フィールドで、近い未来、大きな夢の実現を目指す」人にスポットを当てたドキュメンタリー番組。今回は、「天然アユを東京の河川に蘇らせたい」という小泉正行さんが主役。
 魚の性質を無視して造られた魚道は多い。番組で紹介された例は、魚道の流速が小さすぎると、魚が魚道に「気づく」ことができず、堰のほうへ向かって行ってしまう、というものだった。最近は対策として、呼び水*1を流している魚道もよく見る。番組では指摘していなかったけど、下流側に突き出ている魚道も問題だよね*2。まあでも、こないだ行った利根河口堰*3でも魚道を新設してたし、追い風傾向ではあると思う。
 さて、個人的に気になったのは、多摩川の昭和用水堰*4の話。ここの魚道はハーフコーン型*5なんだけど、コーンとコーンの間の「プール」の水深が浅くて、アユがジャンプできないよ、ということ。ここで、一般的には公の機関に頼むところだろう。おそらく小泉さんもそうしたが、うまくいかなかったのだと思う。そこで彼がやったことは、木材と杭、土嚢を用いて、自分の手で「プール」を改良したのだ。しかも、地元の関係者と共にだ。
 土木工事と言うと、「重機を利用して」「それを専門の仕事とする人たちが」やるものだ、という印象があるけど、そうある必要性は絶対ではない。こと生態系保全技術に関連するようなものであれば、こういったミクロな視点、小さな規模で大きな効果を持つこともある。ミクロ土木工学、みたいな?

*1:魚に魚道を気づいてもらうための流速の大きい流れ

*2:図を描くと分かりやすいのだけど…要は、魚は遡上ポイントを探しに下流に戻ったりはしない、ということ

*3:あ、これブログに書いてないや

*4:参考:http://www.ktr.mlit.go.jp/keihin/tama/know/bridge/01/16.htm

*5:参考:http://www.agri.metro.tokyo.jp/sinkou-ka/nougyoukibanseibi-kakari/gyodou.htm