河川地形学の位置づけ

 ずっと不思議だったんだけど、ようやく分かった。

 河川工学の分野の研究者が河川地形に手を出していることがよくあって、なんでなんだろうなーとずっと思っていた。地形学なんていうのは地球科学の分野だし、なんらかの問題を解決するための「工学」というよりは、学問的な探究心の結晶みたいな「理学」よりの分野じゃないかな、と思っていた。いや、別に河川工学の研究者が興味で研究するのもありだとは思うけど、なんか腑に落ちないところがあった。
 河川工学はどっちかというと普遍性が高い学問な感じで、地形学は『地形の形成要因やその土地の「癖」を解明することにより』(wikipedia:地形学)どうにかする学問だから、もっとローカルな感じがするわけだ。
 んで、「河川工学」(高橋裕)を読んでいたら、土砂輸送に関する節にこう書いてあった。

すなわち,実験室もしくは幾何学的断面の人工水路の流れにおいては,これら理論の前提条件が比較的よく適合するので,ある程度の精度のある予測値を得ることができる.ただし実際河川の場合は,これらの研究の前提条件以前に,河道全体の河床形態などの条件に支配されると考えられるので,河川地形学に関する知見を得て河床変動そのものをとらえることが必要であろう.



 まあ平たく言えば、対象が複雑すぎるから理論解析だけじゃ解けないね。河川地形学とかを応用するといいかも。ということだと思う。
 ここで僕の誤解していたことがだいたい明らかになった。1つは河道変遷は理論解析でそれなりの精度で予測できると思っていたこと。どうもこれは違うらしい。もう1つは、河川工学の研究者は好奇心ベースで河川地形の研究をしていたと思っていたこと。これも間違い。どうやら河川地形学は、河道変遷や土砂輸送の問題を解決するために取り込まれたものであるようだ。
 てことは、河川工学が環境問題にアプローチするために、生態学を組み込み始めているのと近い状況なわけだ。実に興味深い(福山雅治で)。「河川工学」(高橋裕)については、全部読んだらまとめる。