久しぶりに会った友人がベジタリアンになっていた件
一年間海外留学してきた友人と会ってきた。彼はいわゆる「環境活動家」というやつで、NPO・NGOなんかに入って、環境問題についての活動を行っている。僕が、生態学ではなく土木工学を選んだ理由 - けれっぷ彗星で書いたように、直接的な、技術的なアプローチを選んだのに対し、彼は間接的な、社会的なアプローチを選んだ。だから、お互い相補的なところがあると思っていて、たまに話をすると面白い。
さて、そんな友人だが、これが、ベジタリアンになっていた。もちろん、理由を問わずにはいられない。やはり、と言うべきか、環境問題を意識してのことだった。彼の意見に、僕がネットで調べたデータを追加して、少し整理してみよう。
- 理由1:途上国の人々に供給されるべき穀物が家畜の飼料として消費されることで、貧困問題の原因の1つとなっている
世界の穀物消費量の約4割がが家畜用飼料となっている。それもそのはず、豚肉1kgを生産するには穀物7kgが、鶏肉1kgを生産するには穀物4kgが必要とされている。
- 理由2:放牧等によって環境破壊が引き起こされている
環境のキャパシティを上回る放牧によって、森林破壊、土壌侵食、砂漠化などが生じている。
- 理由3:水資源の偏りが加速する
ヴァーチャル・ウォーターの考え方に基づくと、小麦1kgを生産するのに必要な水は約2.0t、米なら約3.6t。これらに対し、鶏肉1kgを生産するのに必要な水は約4.5t、牛肉なら約20.6t。これを賄うために水資源が必要とされるため、輸出入に伴う水資源の偏在や、地下水位低下が起こる。
とりあえず客観的にみるとこんなところか。なるほどね。で、面と向かって言うのはあれだったのだけど、それって君が取り組んだところで効果があるのかな?「小さなことでもみんながやれば、世界は変わる」的なことがないとは言わない。例えばレジ袋の問題なんかはそれなりにボトムアップの効果などもあって、行政も動いたりしたわけだ。でもそれは、あくまでも、みんなが実践できるレベルだったからであり、レジ袋がなくてもそんなに困らないレベルだったからだよね。肉を食べないライフスタイルが多くの人に受け入れられるとはちょっと思えない。ので、上記のような問題が、個人のベジタリアン化そのもので解決することはたぶんないだろう。本質的なことを言えば、上記のような問題の解決方法は「肉を食べないライフスタイルに移行すること」ではない*1。解決には、技術的・経済的・政治的なアプローチが必要だ。
しかし、だ。彼のベジタリアン化が全く無駄であるか、というとそんなことはないと思う。むしろとても有意義だ。その理由は、彼がそのようなライフスタイルをとっていることが、上記のような問題が存在することをアピールする広告の役割を果たすからだ。誰も貧困問題や環境問題を引き起こすために肉を食べているわけではないだろう。だとすれば、彼のライフスタイルは、多くの人々が無意識下に埋没させている問題意識を掘り起こすきっかけとなる。*2そしてそれは、まさに彼の採用した「環境活動」というアプローチそのものである。
あ、これまだ読んでないんだけど、読んだほうがいいかな?↓
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