日本の河川

「日本の河川」(小出博)読了。
1本1本の河川について知識を学び,これを整理するより外に方法がない。

日本の河川―自然史と社会史

日本の河川―自然史と社会史

 小出博さん。地質と土木、農学をつないでいた人物である。農学部出身であるが、地質についての熱狂ぶりは凄まじく、目がやられるほど岩石顕微鏡を覗き込んでいたとか。
 僕が地質に興味を持つのは生物環境からであった。川の生物にとって良好なハビタットはどのようなものか?それは、川のしくみ、つまり洪水頻度や局所の流れ、礫の分布などが効いているのだ。では、それを規定するものはなんだろうか?気象もそうだろう、人工的な手入れもそうだろう、そして、無視できないのは、その土地の地質である。
 高校の頃、仁淀川に行ったことがある。川に入ったあとの第一印象を覚えている。あれ、思ったより関東の川に似てるな。そう思った。今思えば、川のマクロなかたちとミクロな底質を見ていたのだろう。岡山の川や琵琶湖の川は、関東の川とあまりにも違っていて、びっくりしていたものだったから。
 今、この本を読んでおおよそ分かってきた。内帯と外帯、という話がある。こちらを見ていただくとよいが、日本列島は、中央構造線を境に、内帯(中国大陸側)と外帯(太平洋側)にわかれる。そして、この内帯と外帯では、地質・地形の性格がかなり異なる。内帯は以下のような。

地塊運動の影響をうけて,複雑な多くの地塊に分かれ,それぞれ隆起と陥没を行なった結果,小盆地群が発達しているところ

これに対し外帯では、

準平原の発達が弱く,規模の大きいものはほとんどないけれども,山地の開析はかなりすすんでおり,わずかながら高位平坦面,あるいは緩傾斜面の発達が各地に見られ

るそうである。言われて見れ……ば?花崗岩分布が狭く、散在的だったりすることもあるらしい。
 まあ、このようなかたちで、地形のかたちと、地質の違いは川の景観を大きく左右する。しかし、それでも、そこまで分析しても、これは本書のイントロに過ぎない。小出博さんがとりあえず出した答えは以下のとおりである。

戦後治山治水に関連して河川を見る機会が多くなったが,河川と平野については地域的な特徴をつかむのが非常に難しいことを知った.この困難を打開するには迂遠なようでも,1本1本の河川について正確な知識を学び,これを整理するより外に方法がないと考えた.

それが本書である。