読書

ローマというシステムの強さ

ついに「ローマ人の物語」を読み始めた。最近はてきとーなBOOKOFFに入ると、1〜5巻くらいまではそれぞれ100円で手に入る。以降の巻はなかなか難しいっすね。とりあえず、プロローグ的な「ローマは一日にして成らず」(1,2巻)と「ハンニバル戦記」(3〜5巻)…

遠野物語は、民俗学のテキストなんかではない

レヴィ=ストロースの「悲しき熱帯」、岡本太郎が求めた民族学、南方熊楠の民俗学を辿ってきて、やはり、どこにでもその影を落とす柳田國男。日本で民俗学を考える上で外すことができない巨人だっていうことはわかるんだけど、とりあえず手にとった遠野物語…

凄いものを見て、凄いと感じられること

「ヴォイド・シェイパ」読みました。文庫版の表紙が綺麗だったので、うっかり買ってしまった。森先生、あいかわらず凄さを垣間見せる手法がめちゃくちゃうまいなー、と思う。S&Mシリーズとかの萌絵→犀川先生、犀川先生→四季の視点でもう確立されていて、まあ…

それは恋愛に似ている

新宿の古本市で見つけた。「生き物が好きな人」と「生き物を飼うことが好きな人」は、似ているようで違う。この一文で始まる。うん、まさにその通り。生き物を飼うということ (ちくま文庫)作者: 木村義志出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2005/07/06メディ…

SFの定義は世界フリーク、だと思う

SFの定義は世界フリーク(Sekai Freak)、だと思う。サイエンス・フィクションとか、すこし・ふしぎ、とか、まあ色々な定義があるけども、やっぱり僕にとってのSFは、世界の原理のようなものを変えてみて、そこでどんなことが起こるか観察するという箱庭観察…

日本の最深部へ

「岡本太郎の宇宙」シリーズの4冊目。沖縄、恐山、熊野、出羽三山。岡本太郎が「日本」と対峙する文章が集められている。文庫としては『沖縄文化論』が別に出ているが、あれがまるまる収録されているのかと思う。日本の最深部へ 岡本太郎の宇宙 4 (全5巻)…

秩序をひっくり返す装置として

カイエ・ソバージュも少しづつ読んでいくつもり。ほんとは1から読まないと、神話の定義があいまいなまま読み進めちゃうことになるわけだ。2ほどのインパクトはないけど、本来必要なステップだろう。人類最古の哲学 カイエ・ソバージュ(1) (講談社選書メチエ)…

20年前にもあった「維新の会」

相変わらず維新の会がお茶の間を騒がせているけど、20年以上前にも「維新の会」があったことを覚えている人は少ない。……まあ、僕はまだ小学校に入っていなかった頃の話だけども。大前研一 敗戦記作者: 大前研一出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1995/11メデ…

私は鑑賞者として感激したのではない

GWに渋谷でやってた「海洋堂フィギュアワールド」でガチャガチャやったときの戦利品。これはいいものだ! ちくま学芸文庫の「岡本太郎の宇宙」シリーズをちびちびと読み進める。刊行順でいくと、1対極と爆発→3伝統との対決→2太郎誕生になるんだけど、読み順…

「壁と卵」の現代中国論

この本を初めて開いたのは、ちょうどPM2.5が話題になっている頃だった。とある部品メーカーさんとお仕事をしていて、栃木にある工場にいたのだけれど、花粉なのか、黄砂なのか、それともPM2.5なのかわからないけれど、マスクを外すと目がシバシバするのだ。…

渡りの足跡

好き嫌いを言葉に起こしてみよう、言語化してみよう、と思い始めている。「渡りの足跡」を読んだ。渡り鳥に対する細やかな目線、そこから大きく自然を捉えて、畏敬的な感覚へとつなげること。こういう感じ方、考え方、表現の仕方はけっこう好きだ。積極的に…

イザベラ・バードという素敵な人物について

東北のことをもっとよく知りたい、と思ったのは、やはり震災がきっかけだっただろうと思う。震災があって、東京と東北がどうつながっているか、というパスに敏感になった。東北から東京には人が運ばれてきている。農作物や魚介類も運ばれてきている。工場か…

受け取る物語としての「トーマの心臓」

「トーマの心臓」(萩尾望都)読了。エーリク、ユーリ、オスカーの誰に感情移入するか?トーマの心臓 (小学館文庫)作者: 萩尾望都出版社/メーカー: 小学館発売日: 1995/08/01メディア: 文庫購入: 21人 クリック: 237回この商品を含むブログ (222件) を見る …

世界の経営学者はいま何を考えているのか

「世界の経営学者はいま何を考えているのか」(入山章栄)読了。アメリカの経営学者はドラッカーなんか読まない。世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア作者: 入山章栄出版社/メーカー: 英治出版発売日: 2012/11/13…

「下町ロケット」をそうやって消費する日本社会が怖い

「下町ロケット」(池井戸潤)読了。あー、すごくオッサン受けしそうな物語だな―と思った。下町ロケット作者: 池井戸潤出版社/メーカー: 小学館発売日: 2010/11/24メディア: ハードカバー購入: 20人 クリック: 404回この商品を含むブログ (196件) を見る な…

目薬αで殺菌します

「目薬αで殺菌します」(森博嗣)読了。Gシリーズ7作目。以下、ネタバレあります。αのラベルがついた目薬に、劇薬が混入されている事件が起こるお話。もちろんそこには真賀田四季の影が。目薬αで殺菌します DISINFECTANT α FOR THE EYES (講談社文庫)作者: …

世界の化けの皮ひっぺがしちゃいますよ!

「百年の孤独」(ガルシア・マルケス)読了。僕の解釈→「マジックリアリズム」=「世界の化けの皮ひっぺがしちゃいますよ!」百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)作者: ガブリエルガルシア=マルケス,Gabriel Garc´ia M´arquez,鼓直出版社/メーカー: 新潮…

柳田國男が競争の歴史を見出したものに、南方熊楠はただのリアス式海岸を見た

「森のバロック」(中沢新一)読了。南方熊楠が「巨人」と言われる理由が、わかった。森のバロック (講談社学術文庫)作者: 中沢新一出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/11/10メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 28回この商品を含むブログ (39件) を見るは…

婆のいざない

「婆のいざない」(赤坂憲雄)読了。悲しき東北、といったところだろうか。婆のいざない―地域学へ作者: 赤坂憲雄出版社/メーカー: 柏書房発売日: 2010/03/01メディア: 単行本 クリック: 17回この商品を含むブログ (7件) を見る 赤坂憲雄の著書は初めてだけど…

貧乏人の経済学

「貧乏人の経済学」(アビジット・V・バナジー、エスター・デュフロ)読了。絶望的な状況に対する唯一の希望は、丁寧な議論の積み重ねである。貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える作者: アビジット・V・バナジー,エステル・デュフロ,山形…

リスペクトって、原作に忠実なことじゃないだろう?

「トーマの心臓」(森博嗣)読了。「憧憬」というのは、難しい感情だと思う。トーマの心臓 Lost heart for Thoma (文庫ダ・ヴィンチ)作者: 森博嗣,萩尾望都,原作:萩尾望都出版社/メーカー: メディアファクトリー発売日: 2012/04/23メディア: 文庫 クリック: …

伴読部 第9回『渋滞学』

伴読部のスタートのとき、「理系っぽいセレクトもあったらな」という話があったような気がしていて*1、確かにそれも一理あるな、などと思いつつ、『熊から王へ』みたいな境界分野でノラリクラリしていたわけだ。ので、ここは一発、前提知識がなくても楽しめ…

今年読んでよかった本 in 2012

年末です。毎年恒例、今年読んでよかった本をご紹介。対象は、僕が今年読んだ本のうち、オススメできる本。あと、このブログで言及したもの。ブログで感想書いてる以外にも何冊か読んではいるけど、それらは僕としては「読めていない」という扱いなので、取…

そこに自分の影を見出す、ということ

「秋葉原事件」(中島岳志)読了。この本は僕のナチュラルな射程からは少し外れる。この本を持ってきたのは、いつもの伴読部でも、わりと挑戦的なセレクト*1をしてくる赤亀さん(id:chigui)。結局、その回は違う本になってしまったのだけど、最近は本を読む時…

悲しき熱帯

皆の語るレヴィ・ストロース評を読んでも、まあスゴイのかな、くらいにしか思えないけど、「悲しき熱帯」を読めば、わかる。これは、すごいですよ。しかるべき感受性を持った人が、しかるべき文脈で読めば、面白くないわけがない。悲しき熱帯〈1〉 (中公クラ…

万象に天意を覚えるものは幸せなり

「評伝 技師 青山士」(高崎哲郎)読了。万象に天意を覚えるのは、もう少し先になりそうです。評伝 技師 青山士―その精神の軌跡 万象ニ天意ヲ覚ル者ハ…作者: 高崎哲郎出版社/メーカー: 鹿島出版会発売日: 2008/11メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件)…

ねむり姫

「ねむり姫」(澁澤龍彦)読了。本による地獄めぐり、寄り道編。ねむり姫―澁澤龍彦コレクション 河出文庫作者: 澁澤龍彦出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1998/04/01メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 24回この商品を含むブログ (30件) を見る 地獄め…

地獄の思想

「地獄の思想」(梅原猛)読了。地獄とは、善悪の価値判断とは関係のないものだ。地獄の思想―日本精神の一系譜 (中公文庫)作者: 梅原猛出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2007/05/01メディア: 文庫 クリック: 5回この商品を含むブログ (7件) を見る 旅と…

暗いところに立つことになっても、暗さに飲み込まれずにしっかりと立っているのだ

「不毛地帯」(山崎豊子)読了。商社の真髄が見える資料であり、同時に覚悟を問う物語。不毛地帯(一) (新潮文庫)作者: 山崎豊子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2009/03/17メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 86回この商品を含むブログ (58件) を見る 周り…

伴読部 第8回 『東インド会社とアジアの海』

国でも時代でもなく、東インド会社という切り口が秀逸。今回は赤亀さんの推薦で、あまり慣れない「歴史」に挑戦することに。東インド会社とアジアの海 (興亡の世界史)作者: 羽田正出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/12/18メディア: 単行本購入: 2人 クリ…